ナバテア文字 英 Nabataean script
アラビア半島の北西部,死海とアカバ湾との中間にある岩山のぺトラ(Petra)を都として前 200 年頃から約 300 年間栄えたナバテア王国を中心として書かれた,ナバテア語直接資料の文字をいう。[松田]
ナバテア文字はペトラだけでなく,ナバテア国の他の町々やネゲブ(Negev),さらにエジプト,北アラビア,シリア,イタリアの各地からも発見されたが,これらは大部分墓碑ないし奉納文で,ペトラから出たナバテア文字の貨幣と同様,この国がローマ帝国のアラビア州(Provincia Arabia)に併合された紀元 106 年以前のものである。それ以後の碑文は,主に,北アラビアから出ている。これらのナバテア碑文の書体は楷書的であるが,死海近辺のナハル・ヘベル(Nahal Heber)の洞穴で発見された紀元 100 年頃のパピルスに書かれたナバテア文字には,アラビア文字に近い草書的な書体も見られる。
ナバテア文字の構成
末尾子音字
ヘブライ文字などと同じく,子音字の中には語末形を持つものがあるが,常に記されるものではない。[Everson]
ナバテア語テキスト
ナバテア文字 [Nesnad / CC BY 4.0 / 出典] |
ナバテア文字アルファベット [Sabulhab / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
サンプルテキスト
[Everson] |
文字入力
文字コード
現在のところ,ナバテア文字はユニコードに登録されていない。他方,独自の文字コードを持つ数種類のフォントが存在し,次の例は, Nabataean Aramaic の文字コード表である。注
- 松田伊作 (2001)「ナバテア文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 692.
- Everson, Michael (2010) Proposal for encoding the Nabataean script in the SMP of the UCS. (1.59 MB)p. 9.
関連リンク・参考文献
[最終更新 2022/03/15]