地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

テオティワカンの文字 英 Teotihuacan writing,西 escriture teotihuacana


テオティワカンは,現在のメキシコ市の北東約 50 km の地点にある大遺跡で,西暦 1 世紀後半にその全盛期を迎え,繁栄した総合的な都市文明を発達させた,当時のメソアメリカにおける最大の都市集落であった。その領域は約 600 km2 で,都市区域は 20 km2 以上にわたり,人口は少なく見積もっても 12 万 5000 人,ミリョン(René Millon)は 20 万人にも達していたと算定している。[植田 p. 631]

テオティワカンでは,マヤやサポテカなどとは異なり,石碑や祭壇などの石に刻んだものはなく,主に壁画に文字らしい慣用化された記号が見られるが,土器や土偶にも「年」の記しなどが現われる。[八杉 p. 1023]

テオティワカン・テキスト

図では,文字らしきものが,漫画の吹き出しのように口から出る渦の中に描かれている。それらの中には,のちのアステカの文字にまで受け継がれた文字もあり,地名を表す文字と考えられるものが同定されている。文字とするには単独で生起することが多いが,吹き出しの中では,たくさんの記号が連続して出て,文字を記しているような印象を受ける。しかし,意味は不明である。[八杉 p. 1023]

テオティワカンの文字。この人物は,貝殻,文字が刻まれた翡翠,その他巻物を持ち歩いている [Taube Fig. 1a, p. 3]

1992 年から 1994 年にわたって,メキシコ国立人類学・歴史学研究所によるテオティワカン特別プロジェクトが実施され,テオティワカンにおける社会生活,経済,イデオロギーなど都市生活の解明に主眼を置いた調査であった。ラ・ペンティージャ(La Ventilla)と呼ばれる居住区が,その調査対象であった。発掘主任のカブレワ・カストロ(Ruben Cabrera Castro)がこの調査の報告をまとめた概報に,発見された文字がまとめられた。[植田 p. 633]

ラ・ペンティージャの「絵文字の中庭」の文字 [Taube, Fig 10b, p. 14.]

これを図像の形態によって7種に分けると以下のようになる。[植田 p. 633]

1) 容器の図(8,12,18,38)
2) 動物の頭部図(7,14,17,27,42)
3)ハチドリの図(10,16,20,36)
4) 人頭または猿の頭の図(1,13,15,30,31,32,33,37,40)
5) コパルの袋の図(4,5)
6) 蛇の図(9,11)
7) その他(2,3,6,19,21~26,28,29,34,35,39,41)

「絵文字の中庭」(THE PLAZA DE LOS GLIFOS)の文字とテパンティトラの壁画(TEPANTITLA PORTICO 2 MURALS)のとの比較。[植田 p. 635]

[Taube, Figure 23, p. 31.]
a,d,e,g はテパンティトラの記号,b,c,f,h,j ラ・ベンティージャの文字。
a) Speech scroll containing notched bone and flame and jaguar eating heart, Tepantitla (drawing BY AUTHOR)
b-c) La Ventilla glyphs with jaguar consuming heart sign (from Cabrera Castro 1996b:33, nos. 17, 42)
d-e) Tepantitla texts containing coefficient of ten and head of old man (drawings by author)
f) Head of old man sign, La Ventilla (from Cabrera Castro 1996b:33, no. 13)
g) Tepantitla glyph composed of profile human heads, road, and flames (drawing by author)
h-i) La Ventilla glyphs with flame elements (from Cabrera Castro 1996b:33:nos. 7, 40)

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[最終更新 2022/01/20]