マハージャニー文字 Mahājanī lip 英 Mahajani letters

マハージャニー文字は,デーヴァナーガリー文字が簡略化された文字体系で,「商人,金貸し」を意味する mahājan の文字の意。この文字はまた,ラージャスターンのマールワール地方出身の商人がよく使うことからマールワール文字(Mārwāṛī lipi)ともいわれる。主に,マールワール地方,および,その地方出身の商人が記帳・通信に用いる。(→ 坂田)
マハージャニー文字は,母音の表記が不十分なため,文字体系としては優れたものとはいえない。すなわち,これによって表記される言語がおよそ 10 の母音をもつにもかかわらず,マハージャニー文字は,語頭では 2 つないし 3 つの母音のみを表記でき,その他の位置では母音を表記できない。また,公的な場で使われることがないため,地域と個人の変種がたくさんあって,標準化されていない。
表記の不完全さの例 |
通信文の表記 ローマ字転写:B b a j m r g y) |
意図した通信 母音を補足:Bābū ajmer gayo.「旦那はアジェメールに行った」 |
誤読された形 Bābū āj mar gayo.「旦那はきょう死んだ」 |
マハージャニー文字表

マハージャニー文字見本

ユニコード
マハージャニー文字のユニコードでの収録位置は U+11150..U+1117F である。フォントは,Unifont Upper を使用。

関連リンク
注
- 坂田貞ニ(2001)「マハージャニー文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
[最終更新 2019/01/20]