侗字
侗(かむ)字,方塊侗字とも。カム語は,中国の貴州,湖南,広西の 3 省に居住する,中国語で侗(トン)族と呼ばれるタイ語系少数民族の言語である。中国名に従って,トン語(Tung)と呼ぶことも多い。(三谷)
侗字は,漢字を表音文字として借りる型をとる。侗語の発音を表記するのに漢字の発音を借りる例を次に示す(数字は声調を示す)。姆など後続の文字は,発音をより正確に書き表そうとしたものである。(西田)
高錦 kau3 tən2 《山の頂》 消 ɕau1 《あなた方》 達姆 tam1 《柄〈え〉》 其阿母 ȶham3 《歩く》 侗字は,また,漢字を表意文字として借りる型,いわゆる訓読法を用いる。つまり,カム語の意味に当たる漢字を使って表記し,カム語で読むケースである。
風 ləm1 《かぜ》 挑 tap3 《かつぐ》
方塊侗字と侗語の発音 (出典 方块侗字)
(意味:“父進村 雷進天”)
伓 咾 村 雷 咾 悶 pu lau sən pja lau mən
注
- 西田龍雄(1981)「東アジアの文字」『講座言語 第 5 巻』(大修館書店)
- 三谷恭之(1988)「カム語」『言語学大辞典 第 1 巻』(三省堂)
[最終更新 2019/04/20]