チャック文字 Cak script
チャック語(バングラデシュ・チッタゴン丘陵,チベット・ビルマ語派ルイ語群)を表記するためのチャック文字は,インド系文字の流れをくむ音節文字である。チャック語は伝統的には文字をもたない。ただし,チャック語を表記する必要がある場合には,バングラデシュではバングラ文字で,ビルマでは(サック語として知られている)ビルマ文字で表記されることがあった。
しかしながら,チャック語にはバングラ文字やビルマ文字では表記しきれない音声が存在する。そこでチッタゴン丘陵・バンドルバン県在住の Mong Mong Cak により,チャック文字が考案された。そして,彼の弟である Ong Khyaing Cak により,チャック文字の教科書が出版された。字形にはビルマ文字やシャン文字,チャクマ文字の影響がつよく見られる。次の表は,それらの文字とチャック文字との比較を示すものである。
チャック構成
チャック文字には基本字母として 9 の独立母音字と 35 の子音字母がある。このほか,介子音(-y-,-r-,-w-)を表記する文字や,語末子音を表記するための殺母音記号,末尾鼻音(-ŋ)をあらわす文字,声調をあらわす文字などがある。インド系文字でしばしば見られる子音連続による結合文字や重子音字はチャック文字には存在しない。
子音文字
独立母音字と母音記号
子音字母KA +母音記号
藤原氏は,言語学的観点から上記 Ong Khyaing Cak によるチャック文字におけるいくつかの不備を指摘し,次に示す文字音節表(修正案)を提案している。
出典
- 藤原敬介(2015)「チャック文字によるチャック語表記上の課題」『京都大学言語学研究 34』
[最終更新 2019/01/20]