“ ことばで育つ ” ことば塾
言語と人間関係 全2回 ~その1~
2005年1月29日(土)、地球ことば村事務所にて、 詫摩武俊先生(東京国際大学名誉教授・性格心理学)を講師に迎えて、全2回のシリーズ「言語と人間関係」が行なわれました(第2回は2月19日)。このシ リーズで、“ことばで育つ” ことば塾がスタートします。
18世紀の言語学者フンボルトは、「人間はただ、言語によってのみ人間である」と言ったそうですが、詫摩先生はこれを受けて、人間の性
格はどのように作られていくのかを、いったい新生児はどのように言葉を獲得するのかという点から、双子の比較研究を中心にさまざまな実例を挙げて、分かり
やすくお話してくださいました。
「人間は他の生物とくらべて、非常に特殊な状態で生まれてきます。ひとつには、出産時に第三者の介助が必要なほど、からだ、特に脳が大きくなって生まれて
くること。もうひとつは、親あるいはそれに代わる大人に育てられないと生き延びることができない未熟な状態で生まれてくることです。そして1年余りで、親
あるいは周囲のおとなが語りかけることばを聴いて、ひとのことばを理解し、自分もことばを話せるようになっていきます。生まれてから数年のこの時期が、こ
とばの獲得にもっとも大切な時期ということです。したがって、あるひとのことば、あるいはことばづかいはそのひとの生い立ちを物語ると言って過言ではあり
ません。
言いたいことを適切に言い表せるか、相手に分かるように話そうという配慮ができるかどうかは、その幼児期の親あるいは周囲の大人との関係によって決まると
思われます。その意味での「言語環境としての家庭」は、全体として、現代日本において、大変危機的な状況にあります。ことばを育てる関係として、親子関係
をもう一度見直し、ことばできちんとコミュニケーションができ、感情や意思を伝えるためにどうしたらいいのか、考える必要があります」
狼にそだてられた姉妹や、動物の交信行動など豊富な具体例を交えての1時間余りの講義のあと、参加者からさまざまな質問が出て、充実したひとときになりま
した。
次回は、2月19日(土) 午後1時から。「日本語、母語」を切り口として、さらに「言語と人間関係」を深く探っていきます。どうぞご期待ください。 《事務局》