地球ことば村
言語学者・文化人類学者などの専門家と、「ことば」に関心を持つ一般市民が「ことば」に関する情報を発信!
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【地球ことば村・世界言語博物館】

NPO(特定非営利活動)法人
〒153-0043
東京都目黒区東山2-9-24-5F

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ことば村副理事長・井上逸兵慶應義塾大学教授が 
東京神宮ロータリーでスピーチ

東京都の渋谷・神宮地区の企業人の集まるロータリークラブ例会で、2007年9月5日に井上逸兵副理事長がスピーチし、ことば村の活動について、広報をしました。実例をたくさんひいた話に、笑い声が絶えない30分、ことばの現況について、大変有益な話だったと好評をいただきました。以下、その内容をお伝えします。 

● 自己紹介 私の専門の「社会言語学」は、(「言語学」が言語そのものの構造や語彙などを対象とするのに対して)言語が社会の中で、どういう機能を果たしているか、言語コミュニケーションがひととひとをどうつないでいるか、など、いわば周辺の事象から言語を研究する学問です。

● 同じことばでも、同じ意味内容として相手に伝わるわけではありません。たとえば、一定年齢以上の日本人なら、「お出かけですか?」ときかれると「ええ、ちょっとそこまで」と返し、これは挨拶であって、行動を詮索しているわけではないと分かります。ところが、特に欧米人にとってみると、「お出かけですか?」はプライバシーの侵害で失礼なものいいだ、ということになってしまいます。これはことばの慣習を共有しているかどうか、という問題で、異文化間コミュニケーションを考えるとき、重要なポイントになります。

● また、世代間の言語コミュニケーションの違いということもあります。現代、IT時代の言語コミュニケーションは従来のものとどこが違うか。最近の事件で、ネットで知り合った3人の男が、強盗の計画を立て、女性を襲って殺したというものがありましたが、これまで、私たちが人とどう知り合うかというと、初対面でことばを交わし、すこしずつ相手のことを分かっていく中で知り合いになるというプロセスを経ていったわけです。ネットを媒介とするつながりにはこのプロセスがすっぽり抜けているわけで、今後この点が人間関係形成上、非常に大きな問題になるだろうと予測しています。

● 私はこうした、地域間、世代間の言語コミュニケーションを大学で研究しているわけですが、大学の外での活動のひとつとして、「地球ことば村・世界言語博物館」というNPOの理事を務めています。この団体は言語学者や文化人類学者と市民が協同して、ことばの大切さ、ことばを介しての異文化交流を目的として設立されました。日本の言語学の重鎮である千葉大学の金子先生などを中心に、危機言語といわれる少数話者言語の実情(これは英語を中心とする共通語の台頭とも関連するのですが)を広報したり、また、「小学校英語教育」についてのフォーラムをシリーズで開催したりしております。小学校段階から英語を教えるのはどうか、それより日本語をきちんと教えるべきで、その段階でほかの言語に触れると混乱して言語不具者になるのではないか、という意見をよく聞きますが、「ことば村」としては、内容を吟味した上で英語教育を進めるという立場をとっています。世界の3分の2のひとは2言語以上を日常的に使う環境でそだっています。そういうひとたちが言語不具者であるわけはないのですから。むしろ、母語と違う言語を獲得する中で、はばのひろい文化的な感覚を身につけられると考えるべきでしょう。

● 「ことば村」のもうひとつの柱は日本語能力の獲得をめざす「小学校日本語特別授業」の実施です。昨年から品川区立の小学校の四年生を対象に、こどもたちが詩を書き、それに専門家が曲をつけ、クラシック歌手が歌うというシリーズ授業をしています。世界にひとつの自分の歌を、それぞれがプレゼントされるわけで、自分の思いをことばでひとに伝えるという目的が非常に効果的に達成されると、校長先生や教育委員会から高い評価をいただいています。

● 今日のこの機会をいただき、言語のおもしろさや大切さを感じていただき、できましたら、「ことば村」のホームページへもご訪問くださるよう、お願いいたします。

以上