地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ことば村・ことばのサロンA

2006・2月のことばのサロン
▼ことばのサロンA
「イメージと言葉 『声の文化』から映画まで」
話題提供:箭内匡(東京大学総合文化研究科助教授)

文化人類学者の箭内先生のフィールドは、南米チリの中南部のマプーチェ。そこに住む人々は、本来文字を持たず、さまざまな知識を口頭伝承というかたちで伝えています。
彼らは生活の中で、あるいは儀礼の中で、何代も前の祖先から今にいたる出来事を、延々と声に出して語り続けるそうです。数日間にもわたって、話すことのできる「会話の上手なひと」が尊敬され、社会の重要な地位(祈り手など)につくのだそうです。
今、私たちはことばというと、文字を前提に思い浮かべます。「白紙に返す」「一字一句正確な言い方」などという表現はその表れ。ところがマプーチェではイメージを「覚えていること・思い出すこと」が大切で、想起されるイメージの連鎖をことばに翻訳する文化なのです。いわば知識のデータベースを自分の中に持っているわけで、その先例からどう生きるかも導き出される。ですから、こういう文化では、ものごとの正誤やひいては生き方も、私たちとは違っているはずです。

そうした口頭伝承と同等に重要なのが夢。自分の見た夢がなにか意味をもつ「大きな夢」だった場合、家族などに語らなくてはならないそうです。先生が出された事例では予知夢などが多くありました。無意識に持っている知識が夢と言う形で結晶するのだろう、と箭内先生は言います。

文字は人類の歴史からすれば、ごく最近得られたツールです。それまでは、我々の祖先が生きていたのは、多分こうした「声の文化・イメージの文化」ではないか。そして、その復権として、映画というイメージ表現で創造活動をしている監督たちがいる。例えばタルコフスキーやキアロミタス、アフリカの映画作家など。また、アメリカの黒人が作り上げたラップは、まるでマプーチェの人々のように、語りを反復や音の高低を使って、延々と声にする。なるほど・・・、と参加者も納得。
今回は時間がなくて、映画やラップなどの現代文化については入り口で終わってしまいましたが、ぜひ、続きを、という声が多く出て散会。次回が待たれます。