ことば村・ことばのサロン
■ 2008・3月のことばのサロン |
▼ことばのサロン |
「消滅寸前のことばに何が起こるか-カナカナブ語の状況を含めて」
講演要旨 ■土着言語と新来言語は4つの道をたどる。 A 互いに独立したままで干渉しない。隣接言語として生き延びる。例:スイスのドイツ語・フランス語・イタリア語 B 新来言語が優勢になり、土着言語を押しつぶす。 例:日本におけるアイヌ語 C 土着言語が優勢で、新来言語を吸収する。 例:ラテン系のフランス語がゲルマン系のフランク族の言語を吸収 D どちらかの言語をベースに混じりあい、新しい言語(ピジン)が生まれる。 ピジンを母語とする集団が生まれることでクレオールへ進む。 例:バヌアツにおけるビシラマ語 台湾諸語は例外的に日本語ベースのクレオールが発生したことを除き、圧倒的にBの道をたどっている。 ■台湾の新来言語・漢語に押しつぶされる原住民諸語 台湾原住民には伝統的には九つの民族があるとされている。タイヤル、サイシャット、ブヌン、ツォウ、アミ、プユマ、ルカイ、パイワン、ヤミ(タオ)である。それぞれの言語は全く通じ合わない。 漢語が台湾に入ってきたのは17世紀の鄭成功軍駐留のときである。漢語のうち、びん(「門」の中に「虫」)南語(福建省南部方言)が現在は台湾語となっている。漢人は平野部に住み、台湾原住民は山地に追いやられた。漢人の大流入によって、現在、先住民は台湾全人口の2%という少数民族になり、20世紀まで、彼らの言語はかろうじて残ったものの、21世紀を迎えてその諸語は滅亡間近である。 ■基礎語彙による言語調査 言語の語彙は基礎語彙と文化語彙に分けられる。しかし実際には何をもって基礎語彙とするかは難しい問題である。 ■死に瀕した言語で何が起こるか。 パポラ語とケタガラン語で認められるのは 消滅寸前の言語で最後まで忘れ去られることに抵抗し、思い出すことができた単語や表現も、また一種の基礎語彙と言うことができるかもしれない。 カナカナブ語も、記憶している人が10数名という状態にある。土田が40年ほど前に調査したときにくらべると、カナカナブ語においても流音(lとr)の区別が曖昧になっているのがわかる。これは他の消滅寸前の言語についても生じることなのか、知りたいところである。 台湾では2000年頃から固有言語による教育を始めた。教師の研修、教科書作り、授業と並んで、ネットでもダウンロードできる状況になっている。 (文責 事務局)
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