地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ことば村・ことばのサロン

2008・9月のことばのサロン
▼ことばのサロン

 

2008年は国際言語年!全日本社会貢献団体機構助成事業
「チベットの文化と社会」


● 2008年9月7日(日)午後2時-4時30分
● 東京外国語大学本郷サテライト3階教室
● 話題提供:西蔵ツワン先生(医療法人和会・武蔵台病院副院長)
● 西蔵先生は、チベット難民として過ごしたインドから日本へ留学、医師となって日本国籍を取得、 チベットを漢字で表す西蔵を姓として、診療活動を続けるかたわら、世界中にちらばるチベット人医師のまとめ役を 勤め、故郷に帰る日まで海外でチベット問題解決への支援を続けることを使命と考えておいでです。

西蔵ツワン先生

講演要旨

チベット問題の本質

 今年3月10日の僧侶のデモを発端として、改めて世界の目が注目しているチベット問題の本質は「組織的な 文化の虐殺」です。チベット本土では中国語で学校教育が行われ、多くの寺院は焼かれたままで、チベット文化を継承 することはできません。そのために、毎年1500人の子供たちがインドに亡命をしています。亡命先で、チベットの文化に ついて学ぶためです。
 近年、チベット文化は特に欧米の人々の関心を集めるようになりました。世界にとって意味のある文化だと考える 人々がいるのです。

チベット文化とは

 チベットはチベット仏教を土台にした宗教国家です。全てが宗教をベースに形作られています。中心に なっていたのは大小あわせて8000もあった僧院です。しかし、それらは破壊されて現在は100分の一の数になってしまい ました。
 チベットにおける僧院は、宗教施設であると同時に、病院であり、学校でもありました。チベット医学や占星術 (宇宙科学)は僧院で研究・実践されていたのです。僧院こそ、チベット文化の真髄といえるでしょう。
 僧院の本堂、僧房にはマニ車が並ぶ参道があり、マンダラを唱えながら周辺エリアをめぐるルートを歩くことが 人々の日課、それは結果として健康法でもあります。生活は祈りを中心とし、輪廻転生を信じるところから、全ての命を 大切にして虫も殺すことはありません。

チベット医学について

 チベット医学では古来から解剖学が発達しています。これは鳥葬のしきたりによるものと思われます。 鳥葬は、魂の飛び去った物質としての遺体を他の生命の役に立てるために行われてきたもので、医学者は鳥葬場に 行って、人間の体の仕組みを観察したのです。
 また、予防医学も発達していて、食餌療法、運動療法、精神療法など絵図化して掛け軸にされた資料がたくさん 保存されています。診療は脈診が主です。
 チベット本土のラサ近郊に、チョポリ医学センターがありましたが、破壊されて再建されていません。現在亡命政府の あるダラムサラには6年コースのチベット医学センターがあり、若い医師が育っています。
 14世ダライ・ラマ法王はチベット仏教を科学の立場で証明できるかということに関心をお持ちで、瞑想での身体変化を 科学的に測定する試みもされています。

心はチベット人

チベット本土の人口は600万人でチベット人の大半をしめ、ダラムサラなどインドの難民キャンプに 暮らしているのは全体からみると少数ですが、私たちはどこにいても心はチベット人です。その心で、現地に暮らし、 現地で尊敬される存在になることが大事です。

(文責 事務局)




 チベット寺院のたたずまいや民族衣装の女性たち、解剖図の掛け軸などの画像を見ながらのお話でした。今は 中国の貨幣にとってかわられて使われていないチベット紙幣(すごく大きい!)や銀貨の実物も手にとって見せて いただきましたが、「これは私にとってとても大切なものです」と丁寧にしまわれる様子が心に残りました。 平和な話し合いで、問題が解決される日が一日も早いことを祈らずにはいられません。

事務局