地球ことば村
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ことば村・ことばのサロン

2011・11月のことばのサロン
▼ことばのサロン in太田

 

「在日ブラジル人の母語保持教室見学バスツアー」


● 2011年11月26日(土)
● 群馬県太田市国際交流センター


ポルトガル語のつづりを学ぶ子どもたち ことばのサロンがいつもの会場を飛び出し、群馬県太田市のブラジル人集住地域にある母語保持教室を見学しました。太田市には富士重工業などの工場で働く在日ブラジル人が多く住んでいます。(太田市全人口22万131人のうち外国人登録者が7217人、そのうちブラジル人は3002人―平成23年11月現在太田市役所市民課調査)
 2009年3月から、毎週土曜の午後に、太田市国際交流センターでブラジル人コミュニティーの子どもたちのための、母語保持教室がスタートしました。家庭内で親子あるいは祖父母と孫がポルトガル語で会話ができ、ブラジル文化を共有できるように、また、ブラジルに帰ることになった場合に子どもたちが現地にスムーズに溶け込めるように、などの目的で幼稚園から小学校高学年の子どもを中心にポルトガル語だけで授業が行われています。


 この母語教室に以前から関わってきた東京女子大学の松尾慎先生のお誘いで、「ことばのサロン」の見学バスツアーが実現しました。松尾先生は日本語教育・多文化交流などの専門家で、東京女子大学の学生さんたちと何度もこの教室に通っておいでです。
 当日は松尾先生はじめ、学生さんたち、ことばのサロン参加者メンバーその他、総勢25名で新宿スバルビル前を出発。途中、大泉町のブラジルスーパーで昼食と買い物(ブラジル料理はとてもおいしかった!)を楽しみ、現地に到着。2:00からの授業を参観しました。


読み聞かせの様子 3つの教室にわかれて、ポルトガル語の表記の勉強や、フリーペーパーを使ってコラージュしたりする、それぞれの内容での授業を見学。90分ほどの授業の後、全員が集まって、サーカスをテーマにした絵本の日本語とポルトガル語での読み聞かせがあり、子どもたちは真剣に、時には笑いながら、楽しんでいました。


 その後、見学者は「振り返り」の会に参加。教室を見学して、感じた事、考えた事を出し合いました。在日コリアンの方からは、家庭内で朝鮮語が通じなくなり、親子のコミュニケーションの上で困難を抱えているケースがあり、参考になると思って参加した、という声も聞かれました。
「振り返り」の会 初めて教室に来たという幼稚園と小学1年生の兄弟について、はじめは自分の名前をローマ字で書くという課題に苦戦していたが、お兄ちゃんのほうは授業時間内にきれいに書けるようになって驚いたこと、その兄弟を迎えに来たお祖父さんと話して、兄弟が自分から進んで参加したいと言ってきたことがわかったこと、子どもたちがポルトガル語を話すことが、その両親にとってとてもうれしいことなのでは、などなど、沢山の感じた事が出されました。若い学生さんたちからは、新しい世界が開けて、とてもいい経験になったという声が多数ありました。


文字を学ぶ子どもたち 授業では全てポルトガル語が使われ、子ども同士はポルトガル語も日本語も同じような感覚で使っているように見受けられました。小学校英語教育など、小学生段階から異言語に接することについて、日本語をしっかりやってから、という意見も根強くありますが、この母語保持教室の子どもたちはもっと自由に二つの言語を行き来しているように感じました。バイリンガルの場合、どちらも中途半端になるケースもあると聞きます。一方で、アジアやアフリカなどで多民族が住む地域では、小さい時から2言語3言語があたりまえの場所もあります。何語であれ、この子どもたちが自分の意思や思いを「ことば」で自由に語れるようになってほしいと願わずにはいられません。


 貴重な機会をくださった松尾慎先生、バスの手配をしてくださった中村理事に深く感謝いたします。


★太田市在日ブラジル人母語保持教室について東京女子大学・松尾慎先生の取り組みについては下記サイトをご参照ください。(別ウィンドウが開きます。)
 http://www.lab.twcu.ac.jp/shin/
 http://www.lab.twcu.ac.jp/shin/ota/index.htm

以上

(文責:事務局)