普遍と類型
アムール(ハバロフスクから中ソ国境を見る)
ヒトの言語の起源について、たまたままとめて考える機会を得ました。ご意見をください。
「言語の起源」『言語の事典』(中島平三編 朝倉書房 2005年6月刊)
『言語の時間表現』(金子著 ひつじ書房 1995年刊)を改訂しました。旧版は個別言語の現
象に拘泥しました。改版では、類型の普遍的な由来に目標を置いたつもりです。
出版形態は未定です.さしあたり2003年版としてCDを作りましたので、ご希望によりお分けします.
普遍と類型の問題について最近書いた論文を紹介します。
1) Theme, Focus and Negation. CES 5
(千葉大学ユーラシア言語文化論集5,2002)
「提題」が文間の「焦点」が文内部の取り立てであること、「否定が「提題」を前提にした「焦点」不
在であるという話です。
2) Why Incorporation? CES 6
(千葉大学ユーラシア言語文化論集6,2003)
「抱合」を持たない複総合的(polysynthetic)言語が在る(例:イテリメン語)ので、両者は相関的
ではない。この二つの文法的技術は、IP内部の範疇を取り込むか、VP内部の範疇を語彙化する
かという点が違う。
「もし或る言語が動詞を動詞句要素で飾ろうとして語構成・抱合という文法建築法を使うか、それ
とも華麗な複総合的な語をIP要素で刺繍しようとするかという言語の形式趣向によって「抱合」と
「複総合」とがわかれてくる」というのが結論である。
3)Nivkh Time Expression 1 CES 7
(千葉大学ユーラシア言語文化論集7,2004)
ニヴフ語の時間表現について考えました.1では主にオタイナさんの状態動詞の動作様態につい
て書きました.
4) Nivkh Time Expression 2 CES 8
(千葉大学ユーラシア言語文化論集 8,2005)
ニヴフ語時間表現の続きです.ヤコブソンが時制の範疇を求めなかったことは正しかったのではな
いでしょうか.ニヴフ語アスペクトと動詞の語意について論じました.
5)A Note on CAUSE in Nivkh CES9
(千葉大学ユーラシア言語文化論集 9,2006)
ニヴフ語の使役について書きました。被使役者が行為者であるときに、この言語は特別な格表示をし
ます。統語的に規定されたactive caseと見なされます。
6「動詞の意味」(ユーラシア諸言語の動詞論(4)中川裕編(千葉大学大学院人文社会科学研究科2007
に掲載しました。VERB
7)『言語の時間表現』自評
「『国文学解釈と鑑賞』特集日本語文法の現在」(2008.01)に1995年に書いた『言語の時間表現』の自評をしました。
この本は再版されていませんし、訂正を公刊する機会も得ないで現在に至っています。これを機会に何とか考えます。
8)「「内的言語形式」論」『ユーラシア諸言語の動詞論(5)』千葉大学大学院人文社会科学研究科2009年度(2009.02)中川 裕編 pp.1-87
概念と事象の記述(Jackendoff,Pustejovsky,景山太郎、岩本遠億など)と論理形式LFの記述(Chomsky, Rizziなど)とは同型的でありえるだろうか。これは生成意味論以来の、古くは「内的言語形式」(W.
Humboldt)が提起した問題であった。 Humboldtは語彙に関しては否定的であった。しかしそこにEinverleibung(抱合・総合・多総合)が関わることを指摘した。これらの問題を総点検してみたいが、この論文はそのはしがきにすぎない。論議は長くかかりそうである。→innereSPpdf