フクロウ話者
「1000円『から』お預かりします」「注文の品は『おそろい』でしょうか」
この類いの気になる現代用法、そのひとつが「ナントカのほう」というヤツです。
「注文の品の『ほう』はおそろいでしょうか」「コーヒーの『ほう』はいかがでしょうか」「器の『ほう』が熱いのでお気をつけてください」あまりにも「ホ
ウ・ホウ」と連発するひとを、私はひそかにフクロウ話者と呼んでおります。
先日珍しく、観光バスに乗りました。そのガイドさんがこのフクロウ語の話者でした。「みなさまこんにちは!今日ガイドの『ほう』を勤めさせていただく○○
です」から始まって、「おてもとのスケジュールの『ほう』をごらんください。お昼の食事の『ほう』を召し上がっていただく時間の『ほう』ですが」と「ホウ
ホウ」づくし。
おかしくなって、数え始めました(意地悪な乗客でごめんなさい)。横浜駅出発から最初の見学地レンガ倉庫街まで、ものの10分くらいですが、その間に38
回「ホウ」が出てきました。「右にほう」「左のほう」はあたりまえなので、数えておりません。
さらにおかしいことに、倉庫街でおりたとたん同乗者が「やたらにほうほうと言ってましたね」とか「すごいねぇ、オレ、途中から出てくるのが楽しみになっ
ちゃたよ」とささやきあっていたこと。こうなると、結構いい特色なのかも。
でも、この「ほう」は何なのでしょう。丁寧語ではないでしょうね。「思います『けど』」や、「○○したり『とか』」と文を止めて、自分を曖昧にする用法の
ひとつでしょうか。「ほうほうの体」とは関係…無いか。気になりますねぇ。
《三間由紀子、事務局》