地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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「危機言語」

世界には現在、約7000の言語が話されているといわれています。その約半数は 話者数が6000人以下の言語(いわゆる少数話者言語)です。さらに、この少数 話者言語の中に話し手がごく僅かしか残っていない言語がおよそ450あり、同 じような状況に陥りつつある言語が他にもたくさんあることが知られています。 これらの言語は政治経済的・文化的に優勢な大言語に圧倒されたり、より勢力 のある周囲の言語に圧迫されたりして、いま地球上から急速に消滅しつつあり ます。「危機言語」とは、その存在自体が消滅の危機に瀕している、このよう な諸言語のことです。

ある専門家の予測によれば、今世紀のうちに今話されている言語の20~50%が 消滅するということです。残る言語の多くも話し手を失い、危機言語状況に陥 る可能性があり、今世紀末に「安泰」といえる言語は現在の5~10%、数にし て300~600くらいだそうです。言語の消滅は歴史上繰り返し起きてきたことで すが、現在全地球規模で進むグローバリゼーションの影響によりその速度は急 激に加速しています。

言語消滅の問題は人間の文化・心性に関わる面と、人間社会の維持に拘わる面 を持っています。ある言語が消滅することは貴重な人類の遺産のひとつが永久 に失われることを意味します。次々と言語が消滅すれば、人間文化・心性を知 る大事な手がかりが失われ、私たちの人間文化・心性に対する豊かな認識もま た失われるでしょう。言語にはその言語を話す人びとの文化や心性―環境に対 する個々の集団に特有な世界像と、それに結びついた環境への適応戦略や価値 観など-が刻印されているからです。

また、言語は当の集団にとって、単なる伝達手段を超えて自らのアイデンティ ティの証となっています。ある集団の話す言語が衰退・消滅していくことと、 その集団のアイデンティティが徐々に失われていくことはしばしば平行して起 こるものです。言語の消滅は、その言語を話す社会の維持そのものにも関わる 問題なのです。

《日本言語学会「危機言語」小委員会編『「危機言語」Q&A』より》