オーストラリアから
オーストラリアにいる娘からこんなメイルが届いた。
ママへ
ママ元気?
昨日前に言ったロードトリップから帰ってきたの。アデレード、アリス スプ リング、エアーズ、キングキャニオンに行ってきたのだけれど、凄く良かった よ。
アボリジニ人達が結構いて、それに、イッパイアボリジニのアートもあって。
ママがここに来たらきっと喜ぶと思ったよ。でも、チョット切ないというか心が痛いと いうか、アボリジニ人達は自分達の居場所から追い出され、洋服を着せられ、する事と いえば、一日中お酒を飲んでいるっていう感じだから。エアース ロックだって、本当 はアボリジニ人の聖地の場所なのに、彼らは追い出され、観光客達が来る場所となって 、見ていてチョットつらかったんだ。
あと、砂漠を車で走っていると、車には跳ねられて死んでいる野生のカンガルーがかな りの数いて。なんだか人間が踏み込んではいけない所に道を作り車を走らせている様に 感じた。運転していて何ともいえない気分になったよ。やっぱり、入ってはいけない領 域っていうものがあるのに、同じ人間に対してでも、動物に対してでも。しかし、それ を無理やり土足で踏み込んでいくから、こんな事がおきるんだなぁって、感じた。ママ が前にアフリカに行って野生の動物を見に行くのはヤダっていっていたのが凄く分かっ た。
これを読んで、私はうれしかった。娘のすなおな目が人類の歴史の忘れてはいけない
歴史をきちんと捉えたこと、娘が生まれたての肌のような心をまだちゃんともっている
ことを感じて。
私はこう返事をうった:
お帰りなさい。会ったときに、オーストラリアの話をもっと聞かせてね。
手元にちょうどジャレド・ダイアモンドという人の『銃・病原菌・鉄』(草想 社)という本があるんだけど、この本がアボリジニの話を含めて、人間の歴史 のこの面をよく書いていると思うの。読んでみたら?
そしてもう一つちょっと古いものけど、添付した写真を見てみて。オーストラ リア政府の刊行物でAustralian Aboriginal Cultureというパンフの目次ペー ジを写してみたんだけど、入植者とアボリジニとの最初の出会いがイラストさ れてて、やっぱりチョットつらいのよね。あちこち拡大してみてご覧なさい。
それにしてもこれ政府刊行物なのよ。自分達が昔やったことをこうして本にす ることができるっていうの、偉いと思わない?そういうのを「歴史認識」って いうのよね。こうして克服していくしかないのよね、きっと。それにもうひと つ。日本の言語学者で、話す人が一人もいなくなっちゃったアボリジニ語のひ とつをマスターして、逆にその人たちの子供達に教えている人もいるのよ。い つかゆっくりそんな話を聞きたいわね。
じゃぁ、とにかく身体に気をつけて。もうちょっと時々メイルをちょうだい。
《事務局》