「瀬降り」と呼ばれる人々のことば
かなり前になるが、「瀬降り物語」という映画を見た。「瀬降り」と呼ばれる 定住の地を持たない漂泊の民の生活を描いた、なかなか印象深い作品だった。 そして、作品とともに印象に残ったのが、瀬降りたち独自の不思議な「ことば」 だった。
彼らの生活の基盤とも言える「ハタムラ」という掟。太陽を「アヌさん」、 ひとつひとつの集団の長を「ヤゾー」彼らが持つ両刃の山刀を「ウメガイ」…
いったい彼らの使うことばの源流はどこにあるのだろうか?少し調べてみる と、この「瀬降り」とは、どうやら「山窩(=サンカ)と呼ばれた山間を生活 の拠点にした山の民で、その起源も歴史も諸説あるようで、縄文人末裔説、渡 来人説、落人説などさまざまで、固有のことばや文字もあったらしい。
義経もそうであったとか、忍者の源流であるとか、存在そのものが多くのな ぞにつつまれているため、伝奇伝承にはことかかない。日本という国の中にあっ た、我々が使うことばとは異なる「ことば」…。
まだまだ、日本は広くて深い。
(会員S.W.)