トンパ文字の町・麗江
世界中で唯一、現在も使われている象形文字だというトンパ(東巴)文字の中 心地、中国・雲南省麗江へ行ってきました。東京から1日半かけて、空路チベッ ト自治州のシャングリラに入り、そこからまた1日マイクロバスに揺られてた どりついた麗江は、人口34万人、ナシ族はじめ24の少数民族が住んでいる地 域。1996年に大地震があり、大きな被害を受けたことが信じられないほど、整っ た美しい町です。とりわけ、古城と呼ばれるユネスコ世界遺産指定の保存地域 は、柳に縁取られた水路が縦横に走り、甍の波が連なって、本当に綺麗なとこ ろ。地震のあと、中国政府の復興計画より先に、町のひとびとが昔どおりの瓦 を作り、昔どおりの家を建てた、と聞きました。
町の中心から車で30分ほどの玉泉公園の中に「東巴文化研究所」がありました。 その中の、古い時代のトンパ文字を集めた資料館は、なんと休館!これを見に きたのに・・と、がっかり。その前にあった石積みの碑には、なぜかトンパ文 字ではなく、チベット文字の石版が立てかけてあります。 日本なら、トンパ文化の資料館付近は、トンパ文字だらけになりそうなのに、 どうしてなんだろう?と不思議。ここらへんが中国のおおらかさなのでしょう か。
しかたない、と階段を降りると、トンパ文字の教室がありました。お年寄しか 書けなくなっているので、若い世代に伝えるためのクラスを開き、目下150人 の生徒がいるそうです。ガラス窓に一面に、文字が書かれて楽しそうな雰囲気 です。もともと、トンパ文字は、仏教の一派、トンパのお坊さんが経典を書写 するのに使った文字だそうで、書き手によって多少違っていたりするらしい。 だから読むのも大変らしいです。
希望すると書いてもらえるということなので、お願いすることにしました 、現 れたのはキジの羽のついた被り物、きらびやかな服の偉そうなお坊さん。 「健康祈願・一家安泰」みたいな文字をお願いしたのですが、そのお坊さんは ナシ語しかわからない。そこで、日本語から中国語の通訳と中国語からナシ語 の通訳と、ふたりが間に入って説明。にこにことうなずいて、竹のササラのよ うな筆でさらさらと書いてくださいました。
書いてもらったらちゃんと読みたい、ということで町へもどり、さぁ、トンパ 文字の辞書をかわなくちゃ、とお土産屋へ。町の壁のそこここにトンパ文字が 書かれています。 写真の文字を辞書(簡単なもの)で見ると、 左から「背負う」 「箕」「熊?虎?」「手」「ナシ族」「祖先」「掘る」らしいのですが、文章 になっているのかどうか・・・。きっとナシ族の祖先について書かれているの でしょうね。
ナシ族やチベット族の行きかう町ですが、ことばはほとんど(通訳のひとによ れば)中国語。トンパ文字も経典などをのぞけば、私のような観光客むけの存 在のようです。麗江古城は華やかですが、本によれば、その3キロ四方を除く と、極端な貧困地帯が広がっているということ。文字あるいは文化が「観光資 源」となったとき、本来の姿からはきっと遠ざかっていくはずです。観光で豊 かになる層と、相変わらず貧しい層と。その現実の中で、トンパ文字・トンパ 文化はどうなっていくのかなぁ、と思いました。
(会員Y.O.)