地球ことば村
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インド便り/薬草の地・インド コラプットで少数民族に出会う


 インドの叙事詩ラーマーヤナに出てくると言う場所の一つ、東インドはオリッサコラプット
(KORAPUT)地区の小さな村JEYPOREを訪問した。ここにインドの緑の革命の父、スワミナタン教授が主宰する生態研究所が完成し、その開所式が 4月14日(土)盛大に行われた。それに招待されて訪問したのだが、インド駐在通算9年にして初めて少数民族と真近に接する出遭いがあったので報告する。

●4月14日はヒンズー教の神々の一神、無私の忠誠心をもつ猿の神、ハヌマーンの誕生日と言
う。ハヌマーンは、日本では西遊記に登場する孫悟空の原型と言った方がわかり易い。金色の肌と赤い顔を持ち、尾は当方もなく長く神通力をそなえ、身体の大 きさを自由に変えたり、空を飛んだリすることが出来る。

●インドの一大叙事詩ラーマーヤナに、ハヌマーンは無双の怪力と無私の忠誠心で、ビシュヌ神
(宇宙の維持の神)の化身ラーマ王子を助けて、魔王によってスリランカに幽閉されたラーマ王子の妻シーターの救出作戦に大活躍する場面がある。

 スリランカでの激戦でラーマ王子の弟が魔王の矢で倒れてしまうが、これを助けるにはヒマラヤのカーラーサ山に生えている薬草が必要で、それを知ったハヌ マーンは直ちにヒマラヤに一飛び。この山にある薬草を探すが見つからない。そこでハヌマーンは山ごと持ち上げて戦場に運んでしまいこの弟を救う。ハヌマー ンがヒマラヤよりスリランカに向かう途中、オリッサ州に山の一部を落としてしまうがそれがGANDHAMARDANと言う場所。ハヌマーンはスリランカよ りこの山をヒマラヤの元あった場所に戻そうとするのだが、途中にあるGANDHAMARDANが元あった場所と勘違いしてしまい、薬草の山をこの地に置い てしまう。以来、GANDHAMARDANは薬草の宝庫となる。この場所がKORAPUTと その隣のBOLANGIRの境となっていると言われている。

●上述の如く、コラプットは、古来、薬草や薬用米の原産地として有名で、多数の少数民族が住み原始農業生活をしている。彼らの協力を得て、彼らの生態研究 を行いながら、彼らが栽培している薬草や食べている米を現代のバイオ技術で分析して、現代社会に役に立つ技術や物資の有無を解明すると同時に、環境を破壊 することなく彼らの生活が自立する道を探す研究を進めるのがこの研究所の目的。米ゲノムは日本が解明し最先端を行っているので日本との我術交流も進めたい と言う。又、薬草の効果はアユルベーダ(伝承医学)として、インドでは医学として確立されている。最近はSPAとしても注目されている。興味深い研究分野 である。

●少数民族はそれぞれ独自の言葉を持っている。私の部下にオリッサ州ブバネシュワル出身のダッシュ君がいるが、彼は式典に出席していた部族と会話が出来た ので調べて貰った。 米と水と言う生活に欠かせない2つの言葉はヒンデイー語と発音がほぼ同じであることがわかった。
   米: CHAWALO (チャウロ)   水: PAANI    (パニ)
  因みに、インド政府のデーターでは、1991年調査結果、インド総人口の8%、約6千8百万人が少数民族。部族数は、426とも635部族とも言われる。
  コラプットには主な種族として14部族いる。彼女はその内のBHUMIA族に属し、お名前はコーマル・プジャリ(KAMLA PUJARI)さん、55 歳。言葉はBHUMIA語。彼女は、ちょっとした世界的な有名人である。



  2002年度彼女の部族の女性達は、国連開発計画より「赤道賞」を受賞した。その代表が彼女。2002年、ヨハネスブルグで開催された世界サミット(持続 可能な開発に関する世界サミット)に招待されて、彼女はオリッサ州から参加し見事、功績賞3万ドルを獲得。この部族の女性達によって、村落レべルで種子銀 行、食料銀行や水資源銀行が組織化されている点が表彰された。他にインド政府からも受賞。現在、世界から注目されているおば様である。このインド南部の少 数民族はインダス文明を築いた末裔のドラビダ人を祖先に持っている様である。
  彼女と一緒に居られた部族の方々。にこやかな語らい。お肌が黒光りして潤いがある。髪の毛はオイルで櫛ですかれている。鼻輪、ブレスレット、足の指輪など 装飾品を身につけている。いずれも金製の様に見える。


 一際目立った女性は何と言っても中央の女性。BONDA族出身のグルバリ シサ(GURUBARI SISA)さん、55歳。言葉はBONDA語。

吉野 宏
2007 年4月16日ニューデリーにて