つなぎ

テレビ製作現場　食事休憩時間は　あらかじめきめられています。
番組制作関係者
俳優陣　(豪華なお弁当を持ってくる人もいますが)
スタジオスタッフを含めて、
１００名ほどの人達が　一つの番組にかかわる事も少なくありません。
午前９時　開始して
昼食休みは　１２時過ぎ頃、夜の食事休みは　午後７時頃なのです。
ＴＢＳ緑山のスタジオは　横浜市緑区の山の中
ちょっと簡単に　外の飲食店で食事をするわけにはいかないのです。
(休憩を含めた休み時間　１時間ほどですから)
この緑山スタジオには　大小含めて６個ほどのスタジオがありますので
多いときには　軽く見積もっても４００人ほどの人がいる計算になります。
誰でも入れる食堂は　一つだけ　４００平米程度の広さです。
昼食　夕食時間になれば　腹が減るのは　誰もが一緒！
チーフＡＤの掛け声！　「メシキュー入ります！」
(メシ(飯)　キュー(休憩)という意味。)
この声で　大急ぎ！　俳優陣　スタッフ　我先にと食堂を目指して走るのです！
同時間　一度では　対応できない食堂側としては、
あらかじめ　食事休憩予定時間を聞いて
各スタジオ製作担当者と　食事休憩時間を調整するのです。
ところが　どんな番組でも　収録中
俳優陣の台詞の間違え、
開始時間　遅刻する人、
撮影機材の不具合、
技術機材の故障　美術小道具が間に合わない、
スタッフのチョンボ！？
これらのトラブルで予定時間がずれてしまい
食堂の営業時間と合わなくなってしまうことがあるのです。
このまま収録を続けると　午後９時頃になる、、、？
「メシキュー」がなくなったりしたら　俳優陣　スタッフも　大騒ぎ！
おおげさに言えば　暴動が起こるかもしれない？！
誰でもスタジオの中　閉鎖的スペースに入ると
人間　食べる事だけが　唯一の楽しみになるようです。
それで　とりあえず　空腹を満たす意味での食品　
「つなぎ」というオヤツを用意するのです。
「こりゃ　遅れる？　食堂が閉まってしまう？」
ここで出番は　ふだん　スタジオ内では　ぶらぶらしているＡＰ君
(アシスタントプロデューサー)
「つなぎ　(食い物)　用意するのは　お前の仕事だ！」
おえらいプロデューサーにどなられ
ロケバスに飛び乗って緑山付近の街に買いに行くのです。
お弁当　サンドイッチ　おにぎり　お寿司　これらを探しまわります。
ところが　この頃では　緑山の近辺は　人口密度の高い住宅地
特に週末などは　何軒　走り回っても数が　揃わないのです。
しかも　美味しくない物など仕入れて来たら
「あほ！　馬鹿」とか　汗まみれでもどって来たＡＰ君を襲うのです。
以前　緑山の近くでライトバンでラーメンを出している店があり
そのまま　ライトバンのオヤジごとラーメン店を連れてきたＡＰ君は
みんなに褒められて自慢げでした！
また日本テレビ生田スタジオも　食堂事情は　一緒！
「吉野家　牛丼」　ミニバスをスタジオ裏門につけさせ
「さー　どうぞ　暖かい牛丼ですよ！」
この牛丼を食べた小劇団で苦労して　今では　主役をハッている美人女優さん
「美味しい！　牛丼！初めて食べた」　こんなふうに　喜んだとのこと！
―牛丼　初めて？―これ　嘘っぽいですよね？！

《中村和則（2021年掲載）》