地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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パラウン語

 パラウン語は、オーストロアジア語族(Austroasiatic)のモン・クメール語族(Mon Khmer)、パラウン語派(Palaungic)に属する言語です。ビルマ(ミャンマー)にいる135の少数民族の中の一つであるパラウン民族が話して います。

 パラウン語話者はビルマのシャン州や中国の雲南省、タイの北部などに分布しており、いずれも山岳地域です。その中で最も大きいのがビ ルマのコミュニティです。

 ビルマではシャン州北部のナムサン(Namhsan)、クッカイ(Kutkai)、ラーショー(Larshio)、ナムカム(Namhkam)地方、 シャン州南部のカロー(Kalaw)、ピンラウン(Pinlaung)地方、シャン州東部のチャイントン(Kengtung)地方など、主としてシャン州 に分布していますが、カチン州やマンダレー管区の一部にも住んでいます。最も多いのはナムサン地方です。現在、ビルマ国内でのパラウン語話者は約10万人 だと言われています。

 パラウン民族の主な産業はお茶の産業で、三種類のお茶を作っています。これは揚げたいろいろな豆と一緒に食べる発酵したお茶、お湯に 入れて飲むお茶と紅茶などです。

 パラウン(Palaung)はビルマ語による他称で、自称はタアン(Ta-ang)です。その他、ラアン(Ra-ang)、ダラン (Darang) 、ルーマイ(Rumai)、ルーツィン(Rucing)などと自称する集団もあります。

 パラウン民族の名称として「Shwe Palaung(金のパラウン)」とか「Ngwe Palaung(銀のパラウン)」という名前が知られています。これはナムサン地方に住んでいるパラウン族の女性が金の装飾品を、またナムカム地方のパラ ウン族の女性が銀の装飾品を珍重して付けるため、かつてそう呼ばれたのです。しかし自称はそれぞれTa-ang、Rumaiとなります。同様にカローや チャイントン地方に住んでいるパラウン族はビルマ語で「Pale」と呼ばれていますが、前者の自称はRucing、後者の自称はDarangです。

 パラウン男性の服は桃色のターバンをまいて、紺色の上着とズボンを着ます。このズボンの上に桃色の帯をしめます。そして銀刀をかけて います。女性の服は土地土地によって違います。ナムサン地方の(Ta-ang)女性の服はたいてい赤い色です。ナムカムとカロー地方に住んでいる女性たち は服で未婚の婦人、既婚の婦人と分けることができます。服の色は黒い色と緑です。既婚の婦人は腰に籐で作った輪をはめておいて頭にはいろいろな色をした ビーズで作っておいた帽子をかぶります。未婚の女性は派手な服と銀で作っておいた腕輪、耳飾などを飾ります。

ナムサンパラウン女性 ナムカムパラウン女性 カローパラウン女性
(写真左より「ナムサンパラウン女性」「ナムカムパラウン女性」「カローパラウン女性」)

パラウン男性の楽団 ナムサンパラウンの子供たちによるパラウンのlaai mon踊り
(写真左より「パラウン男性の楽団」「ナムサンパラウンの子供たちによるパラウンのlaai mon踊り」)

 パラウン語は地域によって方言差があるので、お互い言葉が通じないこともあります。そのためパラウン民族同士でもシャン州の主要言語 であるシャン語を共通語として使うことがあります。今はビルマの公用語であるビルマ語もよく使われます。

 パラウン民族は日常生活では自分の母語を使いますが、学校教育は公用語であるビルマ語で受けています。パラウン語を書き表す文字が あるのですが、あまり普及しておらず、町と村の中の看板や標識なども全てビルマ語で表されています。また生活のために自分の故郷を離れて他の地方に移住し たパラウン民族はその地方の主要言語に影響されて母語が話せなくなってしまう人の数も少なくありません。

 パラウン語の基本語順はSVOです。下に例をあげます。

 日常生活では日本語のように朝、昼、晩の挨拶の表現がありません。その代わり、「どこから帰ってきましたか(ハ モー ミー  ヤェッー)」、「どこへ行きますか(ハ モー ミー ロォー)」、「お食事終わりましたか(ミー ホォーム ヨォー ポォーム)」などのような言葉を交わ します。

 久しぶりに会う人には日本語と同じように「お元気ですか(ミー キャーム サー コォー)」と挨拶をすることがあります。

 お礼を言いたいときは、「ありがとうございます(ロオッ ミー)」といいます。

《イン・イン・メイ:東京外国語大学(2009年掲載)》