ウォロフ語の文字 英 Wolof writing system
ウォロフ語はニジェール・コンゴ語族大西洋語派に属す言語で,第一言語話者はセネガル(主に中西部),ガンビア(パンジェルおよびガンピア川以北),およびモーリタニア(南部)で用いられる。ウォロフ語はセネガル全土で事実上の共通語となっている。 [1]
ウォロフ語は,12 世紀から 13 世紀頃にセネガル川流域からセネガル中部にかけてウォロフ人を中心として成立したジョロフ帝国の言語としてまず広がった。そして,ヨーロッパ人到来後は,セネガル川流域での奴隷その他の取引で用いられる主要な交易言語となった。さらに,19 世紀後半から本格化するフランスによる植民地支配が北部のウォロフ人地域を起点に始まったことや,セネガルにおいて広範な影響力を持つ主要なイスラム教団がウォロフ語を布教言語としていることなどが,ウォロフ語の拡大をもたらした。 [2]
他方,とくに若者たちにとっては,ウォロフ語は近代的な都市文化を担う言語でもある。セネガルの学校教育で用いられる言語はいまも公用語のフランス語のみであり,新聞や雑誌などの文字メディアはあいかわらずフランス語の独壇場であるが,ラジオやテレビなどの音声,映像メディアでは,近年はウォロフ語が主要な位置を占めるようになってきた。 [3]
文字構成
ラテン文字表記
1974 年,ラテンアルファベットを用いたウォロフ語正書法が制定された。 [4]
アルファベット
発音:母音
発音:子音
サンプルテキスト
Doomi aadama yépp danuy juddu, yam ci tawfeex ci sag ak sañ-sañ. Nekk na it ku xam dëgg te ànd na ak xelam, te war naa jëflante ak nawleen, te teg ko ci wàllu mbokk. |
世界人権宣言第一条 [Universal Declaration of Human Rights - Wolof ] |
ウォロファル
セネガルは人口の 90 % がイスラム教徒で,そのなかでとくに大きな影響力を持つのが,19 世紀の末にアファマド・バンバによって創設されたムリッド教団である。セネガルでイスラームが民衆の間に広まったのは,奴隷交易と植民地支配によって旧社会が崩壊していった時代であった。今日,バンバがアラビア語で書いた教えをウォロフ語で歌う宗教詩人のカセットが市場で売られ,路上ではウォロファル(Wolofal)と呼ばれるアラビア文字で表記されたウォロフ語の宗教パンフレットが売られている。 [5]
文字表 [6]
子音字
母音記号
サンプルテキスト
[Extrait d un poème wolof de Sërigne Moussa KA (1883-1967) Mamadou Cissé (2006) / 出典] |
Garay ウォロフ文字
Garay ウォロフ文字は,ウォロフ語を記述するために,1961 年にセネガルの Assane Faye によって創案された。アラビア文字と同じく右から左に書かれ,字形のいくつかはアラビア文字を想起させる。 名称は,「綿花の白さ」の意[7]。
ウォロフ文字表 [8] |
サンプルテキスト
Garay 文字体系 [Ousseynou Diagne SECK / CC BY-SA 4.0 / 出典] |
注
- ^ 砂野幸稔 (2009)「ウォロフ語」梶茂樹,中島由美,林徹編『事典世界のことば141』大修館書店, p. 478.
- ^ 砂野 pp. 479-480.
- ^ 砂野 p. 480.
- ^ Omniglot
- ^ 砂野 p. 481.
- ^ Omniglot
- ^ Garay script for Wolof
- ^ Kootz, Anja & Pasch Helma (2008) 5000 Jahre Schrift in Afrika Rheinische Druck- und Verlagsgesellschaft Liebe & Pabst, p. 103.
関連リンク・参考文献
- Wolofal script | Wolof language | ウォロフ語
- Language of the Wolof of Senegal
- 清水紀佳 (1988)「ウォロフ語」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 第1巻 世界言語編 (上)』三省堂
- 小川了 (1998)「公教育とインフォーマル・セクター」『可能性としての国家誌』世界思想社.
- ウォロフ語の基数は,十進法の中に五進法を含む記数法を採用する。このような記数法はウォロフ語のほかに,クメール語にも見られる。 同様に,算盤やローマ数字は十進法の内部に五進法を持っており、二五進法と呼ぶ。Wikipedia:ウォロフ語 数