地球ことば村
言語学者・文化人類学者などの専門家と、「ことば」に関心を持つ一般市民が「ことば」に関する情報を発信!
メニュー
ようこそ

【地球ことば村・世界言語博物館】

NPO(特定非営利活動)法人
〒153-0043
東京都目黒区東山2-9-24-5F

https://chikyukotobamura.org
info@chikyukotobamura.org

[コラム]

現役文字

人類の歴史上で誕生した文字体系の種類については,世界文字辞典の項目名には,267 種類の文字名が挙げられている。総数に関して,八杉は「有史以来 300 弱しか知られていない[1]と述べており,コンスタンティノフ [2]は 292 とカウントしている。上記文字辞典の項目を地域毎に集計したものが地域別文字種数の割合である。ただし,約 300 のうちの多くはヒエログリフ,楔形文字,甲骨文なとの歴史的文字であり,現在一般の話者が一貫して使用する現役文字はごく僅かである。

町田による『世界の文字を楽しむ小事典』では,現役文字を対象とし「世界で使用されている文字の種類は,[消滅の危機に瀕している文字] を除くとせいぜい 50 前後[3]と見積もり,44 種類を取り上げている[4]その内過半数は,ブラーフミー文字をルーツとするインド系文字である。

エスノローグ 2022 年 25 版[5]に基づく使用文字別話者数 は,1,000 万人以上の母語話者数を持つ 91 言語を,使用文字に基づいて分類・集計して作成したものである。 91 言語を話す総人口は約 56 億人であり,全世界の人口約 79.5 億人の約 7 割を占め,そこで使用される文字は僅か 21 種に過ぎない[6]

ラテン文字,アラビア文字,デーヴァナーガリー文字などは,特定の言語にのみ結びつかず,国境や民族の垣根を超えて,多種多様な言語の表記手段として使用されている。多くの少数民族言語・文字は,それらの優勢な勢力に取り込まれたり,言語の担い手の減少により,消滅の危機にさらされている。

政治的要因も指摘される。インドの中央政府は 1966 年に,ドラヴィダ諸語を含むインドの主要言語すべてをデーヴァナーガリー文字で表記することを目的とした「拡張デーヴァナーガリー文字表」を発表したが,結局は定着しなかった[7]。一方,中国では標準中国語の普及強化策[8]により,少数民族言語・文字文化の衰退が懸念される状況にある。


稲垣徹
t-ing at tbh.t-com.ne.jp
(" at "を"@"に変えてください)

世界の文字

Writing Systems of the World [Nickshanks / CC BY-SA 3.0 / source]

事 項 索 引 文字名索引 Index of Scripts

東アジアの文字 中央アジアの文字 南北アメリカの文字
東南アジアの文字 中近東の文字 オセアニアの文字
南アジアの文字 ヨーロッパの文字 アフリカの文字
架空文字 書写材料 コラム
参考文献

凡例
類型別文字体系:
agAbugida アブギダ ajAbjad アブジャド al Alphabet アルファベット
ftFeatural 素性文字 lgLogograph 表語文字 pcPictograph 絵文字
sy Syllabary 音節文字
文字名†: 歴史的文字 (現用なし)

 ▼東アジアの文字

 ▼東南アジアの文字

 ▼南アジアの文字

 ▼中央アジアの文字

 ▼中近東の文字

 ▼ヨーロッパの文字

 ▼南北アメリカの文字

 ▼オセアニアの文字

 ▼アフリカの文字

 ▼架空文字

 ▼書写材料

 ▼コラム

[最終更新 2024/03/10]