カローシュティー文字 Kharoṣthī script
カローシュティー文書の断片。2 世紀から 5 世紀のもの。新疆博物館所蔵 [PHG - English Wikipedia / Public Domain / 出典] |
カローシュティー文字で書かれた資料の中,シャーフバーズガリー(Shahbazgarhi)とマーンセーフラー(Mansehra)にあるアショーカ(Aśoka)王の 2 つの碑文が最古の資料で,前3世紀中葉のものである。その後,この地方を支配した諸王朝の王や諸侯たちによる碑文や,貨幣・金属板・舎利容器の銘などがこの文字によって書かれている。それらのほとんどは西暦紀元前 1 世紀から後 2 世紀のもであるが,一部には紀元後 4,5 世紀にまで下るものもあるとされる。
この文字による資料はまた,中国西部からも出土している。代表的なものには,コータン(Khotan)出土の漢字とカローシュティー文字による銘のある,いわゆるシノ・カローシュティー(Sino-Kharoṣṭhī)銭(一説に紀元後 1 世紀から 2 世紀頃のもの),および,白樺の樹皮に書かれた『法句経』(紀元後 2 世紀頃のものとされる)や,ニヤ(Niya),ローラン(Loulan),エンデレ(Endere)出土の木簡類(紀元後 3~4 世紀)がある。
文字構成
カローシュティー文字は,ブラーフミー文字と同様,音節文字である。下に掲げるのは,基本的な音節を示す文字である。1つの文字は Ca を表し,Ci, Cu, Ce, Co の音節は,Ca を表す文字に補助記号を付け加えることによって表記される。
子音字
母音字
数字
数字は普通の文字同様,右から左に書かれる。1 の位の数では,1 から 3 までは 1 を表す文字を数だけ並べることによって,4 以上では 4 を表す文字と 1 を表す文字の組み合わせで表される。10 から 99 までの数は 10 を表す文字と 20 を表す文字とそれら以下の数の組み合わせで, 100 から 999 までの数は 100 を表す文字とそれ以下の数の組み合わせで表記される。
句読点
テキスト
サンプルテキスト
木簡に書かれたカローシュティー文字。インド ニューデリーのナショナル・ミュージアム蔵 [Nomu420 / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
木簡に書かれたカローシュティー文字。インド ニューデリーのナショナル・ミュージアム蔵 [Nomu420 / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
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ユニコード
カローシュティー文字のユニコードでの収録位置は U+10A00..U+10A5F である。Noto Sans Kharoshthi などが対応する。
注
- ^ 吉田豊 (2001)「カローシュティー文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 254-256.
関連リンク・参考文献
- カローシュティー文字
- Gallery
- Omniglot: Kharosthi alphabet