シベ(錫伯)文字 英 Sibe script
出典:『锡伯 (满) 语词典』序 [1] |
ところが,消滅したはずの満洲文字が,はるかに離れた西方新疆の地で,満洲八族の一つ錫伯族の手によって保存伝承されていた。清政府は,18 世紀の中頃乾隆 29 年(1764)に,盛京所属の各地から召集したシベ族官兵 1,020 人とその親族を加え計 3,275 人を 2 隊に分けて,新疆の辺地防衛のため,伊犁に派遣し,その地に駐留させた。そのシベ族駐留軍が,代々,その言語を伝えるとともに,その文字を伝承していた。察布査爾錫伯(チャプチャル・シベ)自治県は,新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州に位置する中国で唯一のシベ族の自治区である。
1947 年以降,シベ族の言語政策者たちは,錫伯索倫(シベ・ソロン)文化協会(錫索協会)を設立して,民族の言語文字工作を行い,シベ語のその後の発展を反映して,満洲文字の個々の字形を多少修正するとともに,必要な音節を加えて不必要な音節を削除した。いま流通するシベ文字はその改良案である。 [2]
シベ文字構成
シベ文字の構成は満洲文字と基本的に変わりなく,個々の字形は,語頭形,語中形と語末形をもち,母音字はその 3 形のほかに,さらに独立形をもつ。
縦書き文字であり,個々の字形を単語ごとに 1 本の縦線でつないでいく形態をとる。行は,左から右に移す。個々の字形は,頭(uzhu),牙(argan),圏(fuka),点(tongki),尾(unchehen)に分析できるが,ng を除いてすべて単体字である。
シベ文字全体は下に示す 40 種の単音字形からなる。 [3]
母音字には,表に載せた 6 文字(1~6)と,下記の独立形がある。
子音字には,子音字(7~30)と,借用語専用字(31~40)がある。
k, g, h には 2 字形がある。
i) a, o. uu 母音に続く形(8~10)。ii) e, i, u 母音に続く形(11~13)。
t, d にも 2 字形がある。
i) a, o. uu, i 母音に続く形(18~19)。ii) e, u 母音に続く形(20~21)。
シベ文字テキスト
ユニコード
シベ文字は,モンゴル文字ブロック U+1800..U+18AF 内に収録され,下の表で赤字で示した部分である。なお,Daicing.com で配布しているフォントは,シベ文字のみ収録している。
注
- ^ 佟玉泉 [ほか] 整理 (1987)『锡伯 (满) 语词典』乌鲁木齐 : 新疆人民出版社.
- ^ 西田龍雄 (2001)「シボ文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂.
- ^ 李树兰 (1992)「锡伯文」『中国少数民族文字』中国社会科学院民族研究所主編 中国藏学出版社,李树兰, 仲谦, 王庆丰编 (1984)『锡伯语口语研究』[北京] 民族出版社. p. 72.