エジプト民衆文字 英 Etyptian demotic
エジプト神官文字と異なり木石に刻まれることが多く,資料のいくらかは聖刻文字と併記され,一部はギリシア語訳を伴う。ロゼッタ碑文はその一例である。神官文字と同様,もっぱら右から左に横書きされた。綴りは 2 つの傾向を示す。一つは,神官文字を民衆文字に置き換えるだけで音変化を反映しない歴史的正書法であり,一つは,史的音変化を反映する表音的正書法である。 [1]
前 7 世紀,サイス朝プサンメティコス 1 世の時代に使われ始め,初期に行政や常用の公式書体として採用され,その後プトレマイオス朝に宗教文書,文学作品が書かれるようになった。初期は,字源となった神官文字への翻字が可能なほどであるが(古民衆書体),プトレマイオス朝から独自の発展をたどり,続け字の豊富なことが特徴である(プトレマイオス朝民衆書体)。ローマ時代には,さらに簡便な書体に向かい(ローマ時代民衆書体),行政におけるギリシア語の優勢に押され法律文書からは途絶えたものの,文学・科学文献や宗教文書に生き残った。使用期間は 1 千年以上にわたり,それまでの記録量をはるかに上回る膨大な文献を残した。
ロゼッタ・ストーンに刻まれた民衆文字 [Chris 73 / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
文字体系
Omniglot
エジプト民衆文字サンプル
前 3 世紀頃の資料と現代の学者による聖刻文字転写。 [2]
木片に記された民衆文字。図 c の裏面にはギリシア文字が 2 行記されている。 [3]
デモティックが書かれたオストラコン(プトレマイオス王朝期,テーベから出土)男の失明を癒すためにアメン神へ捧げた祈り [ One dead president / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
パピルスにデモティックで書かれた契約書,証人の署名付き。( プトレマイオス朝期)[Rama / CC BY-SA 2.0 / 出典] |
注
- ^ 塚本明廣 (2001)「エジプト文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂. p. 157.
- ^ Gardiner, Alan (1957) Egyptian grammar : being an introduction to the study of hieroglyphs. (Oxford : Griffith Institute : Ashmolean Museum. (40.5 MB), Plate II.
- ^ Diringer, David (1996) The alphabet : a key to the history of mankind. (Munshiram Manoharlal Publishers, vol. 2, p. 53.
関連リンク・参考文献
- デモティック
- 地球ことば村「エジプト聖刻文字」「エジプト神官文字」
- Omniglot Ancient Egyptian scripts - Demotic script
- ScriptSource Egyptian demotic
[最終更新 2021/12/10]