ルジャン文字 英 Rejang script
インドネシア,スマトラ島中央部西海岸のブンクル(Bĕngkulu)州で,ルジャン語を話すルジャン人によって使用された。ルジャン文字は,その直線と鋭角に富む字体(書体)の特徴から「レンチョン(短刀)文字(Rĕncong script)」とも呼ばれる。この地方で使われる特殊なデザインの短刀「レンチョン」の形になぞらえて命名したものである。中央部東海岸のジャンビ州(Jambi)では,ともに「レンチョン文字」と呼ばれる,ムラユ語の一種「クリンチ語」を話すクリンチ人が用いる「クリンチ文字」が使用された。それぞれの文字が使用さた地域は「バタク文字」の項の地図を参照。以下,柴田紀男(2001)による。
ルジャン文字は,伝統的には,竹筒,籐片(ラタンの棒),水牛の角,樹皮紙などに書かれた。書記材料が竹筒,籐片,水牛の角などの場合には,書記具としてナイフが用いられ,樹皮紙の場合には,ペンと油煙墨が使われた。書かれたテキストは,恋歌,諺,呪文,氏族譜,手紙などに分類される。
この文字によって書かれた言語は,ルジャン語ではなく,「古ムラユ語」と呼ばれるムラユ語の一変種である。伝統的には,この文字によって文字使用者の母語が書かれることはなかった。
文字構成
ルジャン文字は,「字母」と「符合」とからなるインド系の音節文字である。字母は,内属母音(inherent vowel)/a/ を含んで /((N) C) a/ (/N/ は鼻音,/C/ は子音)を表記する。符合は,内属母音以外の母音を含んだ音節や閉音節を表記するために,字母の上下左右の決まった位置に添加して使用される。
子音字
/k/ に添えた符号類
ルジャン文字例文
[柴田紀男 (2001) p. 1136] |
ルジャン文字入出力
ユニコード
ルジャン文字は,ユニコードの U+A930..U+A95F に収録されている。ルジャン文字フォントには,Noto Sans Rejang などが使用できる。
注
- 柴田紀男 (2001)「ルジャン文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 1135-1137.
関連リンク・参考文献
- Rejang script
- 中西コレクション(国立民族学博物館)ルジャン文字
- Omniglot Rejang