現代ウイグル語の文字 英 Uyghur script

現代ウイグル文字は,中国・新疆ウイグル自治区に住むウイグル人が使用するチュルク系の言語である現代ウイグル語を表す文字である。現代ウイグル語は,ウズベク語と共にチュルク語東部方言チャガチ語群に属し,言語学では古代ウイグルが使用した「古ウイグル語」とは差異が大きいため区別され,「新ウイグル語」「現代ウイグル語」などと呼ばれる。
ウイグル語表記の変遷
ロシア側
キリル文字表記
1920 年に,隣接するカザフやキルギスに住むウイグル人がソ連邦に併合される一方で,ウイグル人の大部分は清朝,中華民国に引き継がれ,1955 年以降は中華人民共和国に暮らすことになる。ソ連側ではラテン文字でウイグル語を表記することが試みられたが,すぐにキリル文字表記に換えられた。→ Omniglot Uyghur
キリル文字アルファベット表

中国側
現代ウイグル語はアラビア文字,ラテン文字の導入の試みに伴う文字改革を経て,1980 年代にはアラビア文字表記に復した。 [1], [2]
アラビア文字表記
中国側では 1930 年代後半から,アラビア語やペルシア語由来の外来語でしか使用されない文字([θ, ð, ħ, ṭ, ð̣, ṣ, ḍẓ, ʔ])を廃止,母音をすべて書き表すなど,アラビア文字表記の改良が試みられた。追加された母音字は 1, 21, 22, 28, 29 および 30 である。また,ウイグル語固有の音を表す文字 3,6,12,19 を追加した。下記の文字表は 1950 年代に使用されたものである。

1983 年にラテン文字表記は再びアラビア文字表記に戻された。その際,以前のアラビア文字表記では曖昧だった /o/(25)と/ø/(27),/u/(26)と/y/(28)も区別されるようになり,ウイグル語のアラビア文字表記は,音素表記と言ってもよい表記となった。
例文 「世界人権宣言第1条」ラテン文字表記
1960 年になると,ソ連でのキリル文字表記の影響もあって,ラテン文字表記が採用されることになった。この表記は,基本的に中国語のピンイン(拼音)と同じで,/ʧ/,/ʃ/ はそれぞけ,q,x のように表記される。次の文字表は 1976 年に改定されたものである。

最新ラテン文字表記
下記の文字表は Uyghur Latin Yéziq (ULY) と呼ばれ,2000 年~2001 年にかけて新疆大学における会議によって提案された新たなラテン文字表記法である。

テキスト入力
ユニコード
ウイグル文字は,ユニコードの収録位置U+0600..U+06FF のアラビア文字領域に含まれる。下表はウイグル語用フォントを用いて作成した。

ウイグル文字表示テスト
ウイグル文字の表示には,汎用のアラビア文字用フォント [3] を使用する。
正しい表示 | お使いのコンピュータでは |
![]() | ئىنئام |
ウイグル文字入力方法
ウイグル語用スクリーンキーボードをデスクトップに表示して,キーボードから文章を入力する。タスクバーには ISO 639-1 の言語コードでウイグル語を表す「UI」が表示される。【参照】 多言語環境の設定


関連リンク・参考文献
Uyghur language
- Omniglot Uyghur
- Ethnologue Uyghur
- Uyghur Arabic-Cyrillic-Latin converter
- ウイグル放送
- London Uyghur Ensemble
- 小田桐奈美(2011)「キルギス語の正書法改革の展開―ロシア語的要素の扱いをめぐって」『ことばと社会 13』
- 菅原純(2004)「現代ウイグル語の文字について」『周縁アラビア文字文化の世界:規範と拡張』(町田和彦, 黒岩高, 菅原純 共編,東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
注
- ^ 阿西木,图尓迪(1992)「维吾尓文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)
- ^ 林徹(2011)「アジアにおけるラテン文字化―アラビア文字からラテン文字へ」『世界の文字を楽しむ小事典』(町田和彦編,大修館書店)