nƂΑ
言語学者・文化人類学者などの専門家と、「ことば」に関心を持つ一般市民が「ことば」に関する情報を発信!
j[
悤

【地球ことば村・世界言語博物館】

NPO(特定非営利活動)法人
〒153-0043
東京都目黒区東山2-9-24-5F

http://chikyukotobamura.org
info@chikyukotobamura.org

世界の文字

パーリ文字 英 Pali script パーリ pāli (pāḷi)-akkara


パーリ文字という単一の文字体系はない。パーリ語が地域ごとに土着の文字(起源的にはいずれも南インドに由来するシンハラ文字,モン系文字,クメール系文字)で表記され,土着の言語の音韻体系に組み込まれて発音される文字体系を総称したものである。→ 藪

パーリ語は,インド・アーリヤ族の民衆言語プラークリット語を代表する言語で,南伝上座部仏教(Theravada Buddhism)の経典語である。「パーリ」という語の意味も,三蔵経(経律論蔵) を指している。パーリ語の経典をその註釈(義疏 aṭṭhakathā,復註 ṭīkā,復々註 anuṭīgā)は,上座部仏教を受容発展させた地域にすでに普及していた南インド起源の文字を用いて書かれた。古くは,もっぱら貝多羅葉(palm-leaf)に刻まれた。セイロン(スリランカ)ではシンハラ文字,ビルマではモン文字とビルマ文字,タイ国ではシャム(タイ)文字,カンボジアではクメール文字,ラオスではラオ(ラオス)文字が用いられる。このように,パーリ語という言語は 1 つでありながら,文字は地域によって異なっている。→ 藪

また,15~16 世紀成立の北タイのランナー王国のユアン文字(Yuan script,モン系文字とタイ系文字の混淆,モン・スコータイ文字)をはじめ,シャン文字,クン文字タイ・ルー文字などによるパーリ語経典がある。また,5~6 世紀のピュー文字による刻文のなかにパーリ語経典断片がある。次に→ Jensen によるパーリ語の各種表記を示す。

パーリ語各種表記 [出典 : Jensen, Hans (1970) Sign, symbol and script : an account of man's efforts to write. (G. Allen & Unwin) p. 388.]
I音価
IIビルマ文字 Kyok-tša (Pāli square script)
IIビルマ文字 painted
IIIビルマ文字 現代
IVタイ文字 Boromat manuscriot
V古タイ文字
VIタイ文字 Pāṭimokkha manuscript
VII古クメール文字
VIII現代クメール文字
IXラオ文字
X古モン文字
XIアーホーム文字

関連リンク

[最終更新 2019/06/20]