マニ文字 英 Manichaean script

マニ文字(文字体系:アブジャド)とは,マニ教の創始者であるマール・マーニー(Mār Mānī, 216~277?)が,自分の宗教の聖典を,彼自身の言語であるアラム語の方言で書き表すために使った文字であり,現在は使われていない。マニ文字はその形式から,同時代のパルミラで使われていたアラム系の文字であるパルミラ文字に基づいたものと考えられている。 [1]
マニは,ササン朝ペルシアの皇帝シャープール1世(在位 241~272)に布教するために,マニ教の教義を解説する本を中世ペルシア語で書く際に,当時一般に用いられていたパプラビ文字を敢えて使わず,マニ文字を用いた。マニ教はササン朝の東方域から中央アジアに広まり,7世紀の末にはシルクロードに沿って中国に達した。マニ教が教線を拡大する過程で,バクトリア語およびソグド語もマニ文字で表記されることになった。さらに,マニ文字で表記された言語には近世ペルシア語 [2],古代ウイグル語(古代のトルコ語),トカラ語Bがある。
マニ文字構成
マニ文字表 [3]

* ソグド語の表記に用いる。** ウイグル語の表記に用いる。
句読点

マニ文字テキスト
サンプルテキスト(パルティア語) [1]

出典:Skjærvø (1996) [3]
サンプルテキスト(ソグド語)
9~13 世紀 トルファン・ベゼクリク千仏洞出土 Wikimedia commons

テキスト入力
マニ文字対応フォント Manichean は Paleofonts V. 2 を解凍して取り出す。マニ文字は,通常の英数字の位置(ASCII配列キーボード)に配置されている。

関連リンク
- Turfanforschung Digitales Turfan-Archiv
- Proposal to encode the Manichaean script in the UCS
注
- ^ 吉田豊(2001)「マニ文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- ^ Henning, W. B. (1962) Persian poetical manuscripts from the time of Rūdakī. in A locust's leg (Alocust's leg. London : Lund Humphries) 写本
- ^ Skjærvø, P. Oktor (1996) Aramaic, Scriptsfor Iranian Languages. In: Daniels, Petre T. and William Bright (ed.) The world's writing systems (Oxford) 邦訳:熊切拓(2013)矢島文夫[総監訳]『世界の文字大事典』(朝倉書店)
[最終更新 2018/10/20]