--> 世界の文字 追加
地球ことば村
言語学者・文化人類学者などの専門家と、「ことば」に関心を持つ一般市民が 「ことば」に関する情報を発信!
メニュー
ようこそ

【地球ことば村・世界言語博物館】

NPO(特定非営利活動)法人
〒153-0043
東京都目黒区東山2-9-24
TEL:03-5798-2828
FAX:03-3713-9932
http://chikyukotobamura.org
info@chikyukotobamura.org

世界の文字

書字方向― 縦書き・横書き



世界に存在する文書は,その言語および表記する文字体系の組合わせによって文字を書き進める方向(書字方向)が異なる。書字方向には,大きく分けて縦書きと横書きがある。
横書きは,文字を行ごとに一方向に横に並べる。横書きには,文字を左から右へ(→)順に並べて行を右に進める左横書き (1) と,文字を右から左へ(←)順に並べて行を左に進める右横書き (2) がある。横書きの一種に,牛耕式(ブストロフェドン boustrophedon)と呼ばれる書字方向があり,行ごとに書字方向が変わるような書法がある (3,4)
縦書きは,文字を列ごとに上から下に縦に連ねる。縦書きには,列を右から左へ(←)順に並べる右縦書き (5)と,左から右へ(→)順に並べる左縦書き (6) がある。また,希な例として左下縦書き (7)と右下縦書き (8) が見られる。
中国語および,その影響を受けた日本語,朝鮮語では,本来縦書きで右から左へ行を進めていた(右縦書き)。しかし,近代以降はいずれの国でも横書きとの併用が行われる。縦書きと横書きの両方が可能な文字言語は現代では比較的珍しく,文字を正方形のマスに見立てて配置する漢字文化圏の特徴である


横書き


左横書き

フェニキア文字がギリシア語の表記のために借用された時期(前 9 世紀頃)は,このギリシア文字の書字方向は多くは右書きであり,時にはプストロフェドンのような中間的な形式もあったが,その後の数世紀のあゆみのうちに左書きに定着した。その理由ははっきりしないが,フェニキア文字では母音を記さない方式であったから 1 単語の字数が少なく(平均 3 ~ 4 文字),左右どちらから書いても判読にあまり困難がなかったと考えられるのに対し,ギリシア文字では母音を表記するようになって単語の字数がずっと増えているので,プストロフェドン方式をやめて左書き方式になったと言えるのではなかろうか。(矢島 1977) ギリシア語が左横書きを採用し,ラテン文字,キリル文字,アルメニア文字・ジョージア文字なと,ヨーロッパのまた,左横書きのブラーフミー文字から発達した多くのインドで行われる文字,さらにビルマ・タイなど東南アジアの言語でも左横書きが広く用いられるようになった。

文字サンプル

東・東南アジアで用いられる文字の中から,左横書きの例を一部例示する。ハングル・ビルマ文字などは,ユニコード・フォントを用い,また,HTML 文書に記述する言語コードの指定方法を赤字で示す。

ハングル

ハングルは表音文字である。ひとつひとつの文字が音節を表す文字体系だが,子音と母音の字母(자모、チャモ)を組み合わせて文字を構成する。このような文字体系をフィーチュラル・アルファベットと呼ぶ研究者もいる。Unicode にはハングルを符号化するための文字が数種類あり,標準的に使用されるものは,ハングル字母 (U+1100-11FF) とハングル音節文字 (U+AC00-D7A3) である。

<span lang="ko">
모든 인간은 태어날 때부터 자유로우며 그 존엄과 권리에 있어 동등하다. 인간은 천부적으로 이성과 양심을 부여받았으며 서로 형제애의 정신으로 행동하여야 한다.
</span>

【出典】 世界人権宣言

トカラ文字

現在の中華人民共和国新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)のタリム盆地北縁(天山南路)にあたる地域で 8 世紀頃まで話されいたトカラ語は,ブラーフミー文字に似たトカラ文字で書いた写本が残っている言語である。インド・ヨーロッパ語族に属し,独立した語派「トカラ語派」を形成する。膠着語的な性格を有していたことがわかっている。西アジアの右書きの影響を受けていた新疆で,トカラ文字は,左から右へ書かれていた。

【出典】 Tocharian and the Tocharians

ナシ文字

中国雲南省に居住する納西族は,ラテン文字のほか 5 種類の文字をもつが,その中の代表的な象形的文字がナシ象形文字である。ナシ族の宗教的活動にあたって,トンパ(東巴)と呼ばれる巫師が使うために「トンパ文字」とも呼ばれている。ナシ族の文字はこの象形文字のほかに,表音字ゴパ(哥巴),マリマサ(瑪麗瑪沙)文字,ラルコ(阮可)文字,ダバ(達巴)文字の存在が発見されている。【出典】 西田(2001)
・ ナシ象形文字

【出典】 Cohen (1958)
・ ゴバ文字
トンパ(東巴)文字より後に作り出した表音節文字で,トンパ文字の発展した形と考えられる。ナシ語で “弟子の文字” と称され,トンパ文字と同様に宗教活動上使われる文字であるが, 1 字形は 1 音節を表し,左から右へと横書きする。約 500 字からなりたつが,その字形は規定がなく,地域による,また,書き手による異形が多い。【出典】 西田(2001)

【出典】 Cohen (1958)

ジャワ文字

ジャワ文字とは,インドネシアのジャワ島で使用されているジャワ語を表記するための文字体系。今の文字体系になったのは 17 世紀と言われ ,この文字で書かれた文学作品が多く残されている。文字は n や u を連ねたような形をしている物が多い。文字の上下に大きく書かれる筆画も特徴的であり,それらは母音半体記号や二重子音,音節末子音を表している。インドの文字体系のように独立した母音文字があり,子音文字にも無気音・有気音に相当する物が存在するが,発音上は区別されていない。Unicode では,U+A980..U+A9DF の領域に文字が収録されている。【参照】ジャワ文字

【出典】 Convent of Pater Noster, The Lord's Prayer,Unicode Font of Javanese script Tuladha Jejeg

ビルマ文字

ビルマに住むモン族が使っていた文字が,改変され 11 世紀後半ごろにビルマ語に使われるようになった。子音を表す基本字母の周囲に母音記号と声調を組合わせて文字が形成される。文字は,全体的に丸っこい形が特徴的であるが,それは昔,文字を書くのに紙代わりに用いられていた貝多羅葉(タラバヤシの葉)が裂けてしまわないよう,直線を使うのを避けたためであるといわれている。多くのコンピュータ環境で,ビルマ文字の入力・表示は整備されていないのが現状である。ビルマ文字を表示するためには,Padauk Font等(下記 font faceを参照)のビルマ文字フォントをインストールする必要がある。Unicode では,U+1000..U+109F の領域に文字が収録されている。

<font face="Padauk,Zawgyi-One,Myanmar3,Myanmar2">
<span lang="mya" language="Burmese">
လူတိုင်းသည် တူညီ လွတ်လပ်သော ဂုဏ်သိက္ခါဖြင့် လည်းကောင်း၊ တူညီလွတ်လပ်သော အခွင့်အရေးများဖြင့် လည်းကောင်း၊ မွေးဖွားလာသူများ ဖြစ်သည်။ ထိုသူတို့၌ ပိုင်းခြား ဝေဖန်တတ်သော ဉာဏ်နှင့် ကျင့်ဝတ် သိတတ်သော စိတ်တို့ရှိကြ၍ ထိုသူတို့သည် အချင်းချင်း မေတ္တာထား၍ ဆက်ဆံကျင့်သုံးသင့်၏။
</span></font>

【出典】 世界人権宣言

ラオス文字

ラオス文字(ラーオ文字とも)はラオス語を表記するための文字で,基本子音字27文字と母音符号,声調記号によって表される表音文字である。今日の文字体系が出来上がったのは,フランスの植民地時代にラオス語の標準化が進められて以降のことである。Unicode では,U+0E80..U+0EDF の領域に文字が収録されている。

<span lang="lo">
ມະນຸດເກີດມາມີສິດເສລີພາບ ແລະ ສະເໝີໜ້າກັນໃນທາງກຽດຕິສັກ ແລະ ທາງສິດດ້ວຍມະ ນຸດມີສະ ຕິສຳປັດຊັນຍະ (ຮູ້ດີຮູ້ຊົ່ວ)ແລະ ມີມະ ໂນທຳຈື່ງຕ້ອງປະ ພຶດຕົນຕໍ່ກັນໃນທາງພີ່ນ້ອງ.
</span>

【出典】 世界人権宣言

クメール文字

クメール文字(អក្ខរក្រមខេមរភាសា,âkkhârâkrâm khémâraphéasa)はカンボジアの公用語であるクメール語を書くのに使われる文字。東南アジアの文字の中で最も歴史がある。文字が誕生して数百年間はサンスクリットを表記するための文字だった。最も古い碑文のクメール文字は西暦 611 年のものだが,文字自体はもっと古くから使われていたと見られる。Unicode では,U+1780..U+17FF,U+19E0..U+19FF の領域に文字が収録されている。

<span lang="km">
មនុស្សទាំងអស់ កើតមកមានសេរីភាព និងសមភាព ក្នុងផ្នែកសេចក្ដីថ្លៃថ្នូរនិងសិទ្ធិ។ មនុស្ស មានវិចារណញ្ញាណនិងសតិសម្បជញ្ញៈជាប់ពីកំណើត ហើយគប្បីប្រព្រឹត្ដចំពោះគ្នាទៅវិញទៅមក ក្នុង ស្មារតីភាតរភាពជាបងប្អូន។
</span>

【出典】 世界人権宣言

タイ文字

13世紀にスコータイ王朝の 3 代目の王ラームカムヘーンがクメール文字を基に作ったといわれている。源流はブラーフミー文字でありブラーフミー系文字の1つに数えることができる。ほとんどの文字(子音では「ก」と「ธ」を除く)に小さい丸があるのが特徴的であるが,字体によっては丸が省略されたり,、ラテン文字に似せたデザインもある。44 の子音字からなり,大文字・小文字の区別はない。Unicode では,U+0E00..0E50 の領域に文字が収録されている。

<span lang="th">
มนุษย์ทั้งหลายเกิดมามีอิสระและเสมอภาคกันในเกียรติศักด[เกียรติศักดิ์]และสิทธิ ต่างมีเหตุผลและมโนธรรม และควรปฏิบัติต่อกันด้วยเจตนารมณ์แห่งภราดรภาพ
</span>

【出典】 世界人権宣言

《左横書きを採用する文字》
東アジアの文字: 規範彝文女真文字悉曇文字ソヨンボ文字チベット文字ナシ文字フレイザー(傈僳)文字ミャオ・ポラード文字東南アジアの文字: アーホム文字黒タイ文字クリタン文字, タイ・ナ文字タイ・ロ文字タム文字トカラ文字パハウ・フモン文字ブヒッド文字マカッサル文字Balinese, Cham, Kayah Li, Redjang, Sundanese, Tagalog, Tagbanwa南アジアの文字: オリヤー文字オル・チキ文字, カンナダ文字グジャラーティー文字グランタ文字グルムキー文字サウラーシュトラ文字シロディ・ナグリ文字シンハラ文字シャーラダー文字, ソラング・ソンペング文字ターナ文字, タミル文字デーヴァナーガリー文字テルグ文字ブラーフミー文字ベンガル文字マニプール文字マラヤーラム文字モーディー文字ランジャナ, リンブ文字レプチャ文字ワラング・クシティ中近東の文字: ウガリト文字ヨーロッパの文字: アルメニア文字エルバサンオガム文字, ギリシア文字グラゴール文字ゴード文字古代教会スラブ語ジョージア文字 (Asomtavruli, Nuskhuri, Mkhedruli)線文字A線文字Bルーン文字Beitha Kukju南北アメリカの文字: イヌイット文字オジブウェ文字キャリア文クリー文字ジュカ音節文字チェロキー文字デザレット文字 ブラックフット文字アフリカの文字: ヴァイ文字エチオピア文字クペレ文字コプト文字ソマリア文字バサ文字ロマ文字


右横書き

西アジアでは,古代アラム語が事実上の国際語として普及しており,その文字であるアラム文字もまた広範に使用されていた。その後,アラビア文字やシリア文字,ヘブライ文字(右図)など,西アジアでは多数の文字が生まれたが,その多くはアラム文字を源流とし,右から左に向かって横に書く形式である。

文字サンプル

アラビア文字・ヘブライ文字の例文では,HTML 文書中で指定する言語・文字方向の記述方法を赤字で示す。

アラム文字

フェニキア文字の変化形であるアラム文字は,かつての中東の国際語(リンガ・フランカ)であった古代アラム語の文字。中東系文字の大部分は,この文字から派生した。パルチア文字・パルミラ文字はアラム文字の一種である。

【出典】 左:アラム文字 | 右:パルミラ文字

アラビア文字

基本的に子音を表す文字からなっており,短母音を文字によってあらわさない。ただし,初学者の学習のためや,外来語の表記などの用途のために,補助的にシャクルとよばれる母音を表す記号も用いる。アラビア語に用いられるアラビア文字はハムザ (ء) を除いて 28 文字であるが,ペルシア語などアラビア語以外の言語では,アラビア語にない子音(p, ch, zh, g など)をあらわすため点や棒を付加したりした文字を 28 文字に付け加えて用いる。
現在,表記にアラビア文字を使う言語は,アラビア語,ペルシア語,ダリー語,クルド語,パシュトー語,バローチ語,アゼルバイジャン語(主にイラン領で),シンド語,ウルドゥー語,カシミール語,パンジャブ語(主にパキスタン領で),ウイグル語,カザフ語(主に中国領で),キルギス語(主に中国領で),ベルベル語,マレー語(主にブルネイ,そしてマレーシアやインドネシアでは,ムスリム向けのメディアや宗教関係),モロ語(主にフィリピンのモロ族),ジャウィ語,バルティー語などである。
Unicode では,U+0600..U+06FF,U+0750..U+077F,U+08A0..U+08FF,U+08A0..U+08FF の領域に文字が収録されている。

<span lang="ar" dir="rtl">
يولد جميع الناس أحرارًا متساوين في الكرامة والحقوق. وقد وهبوا عقلاً وضميرًا وعليهم أن يعامل بعضهم بعضًا بروح الإخاء.
</span>

【出典】 世界人権宣言

ヘブライ文字

ヘブライ文字とは,ヘブライ語やイディッシュ語を表記するための文字である。現代のヘブライ文字は、アラム文字より派生したアブジャドの一種で、基本字母 22 字からなる表音文字で,うち k,m,n,p,ṣ の 5 つの文字に非語末形と語末形(ソフェート)の区別がある。ヘブライ語の話者はヘブライ文字をアレフベートと呼ぶ。Unicode では,U+0590..U+05FF,U+FB1D..U+FB40 の領域に文字が収録されている。

<span lang="he" dir="rtl">
כל בני אדם נולדו בני חורין ושווים בערכם ובזכויותיהם. כולם חוננו בתבונה ובמצפון, לפיכך חובה עליהם לנהוג איש ברעהו ברוח של אחוה.
</span>

【出典】 世界人権宣言

サマリア文字

サマリア文字は,フェニキア文字の一種である古ヘブライ文字から派生した文字であり,サマリア人が話した古典ヘブライ語の方言であるサマリア語を記すのに用いられた。

【出典】 Omniglot Samaritan

ポエニ文字

古代ローマと争った北アフリカのカルタゴの文字。フェニキア文字に近い。左下図: Salambo (チュニジア)出土碑文, 右下図:ラテン文字・ポエニ文字併記碑文。 ⇒ ポエニ文字

【出典】 Diringer (1996)

日本語右横書き

日本語で行われる右横書きは一行一字の縦書と考えられる。同様の右横書きは,「先頭からの横書き」とでもよぶ,車の右側面には右横書き,左側面には左横書きで会社名などを書いたものにも見かける。右図は,旧川越織物市場(明治43)と同じ敷地にある旧栄養食配給所(昭和9年~20年)の看板。

《右横書きを採用する文字》

古ベルベル文字, 古代エジプト文字アラム文字アヴェスタ文字カローシュティー文字メンデ文字ナバテア文字ンコ文字パルティア文字フェニキア文字ティフィナグ文字シリア文字南アラビア文字ターナ文字


牛耕式


牛耕式(ブストロフェドン boustrophedon)は,一行目が右書きならば二行目は左書き,三行目はまたも右書きというような書法である。この書法は,古代小アジアで広く行われ,象形文字ヒッタイト語刻文は多くはこの書法によっている。この場合注意すべきことは,行が変わると各文字記号も向きを変え,裏返しになることである。また,人間や動物の顔を図形に持ちいる場合,書字方向はこれに向かっている。(矢島 1977)
牛耕式は後述する「螺旋状に書く」ことや,ブギス文字の「一列書き」などと並んで,「行」を必要としない書き方である。牛耕式は,一本の紐を折りたたんだようなものである。

ヒッタイト碑文文字・ギリシア語法令

ヒッタイト帝国で用いられたヒッタイト語は,ヒッタイト象形文字(Hieroglyphic Hittite)と呼ばれる文字で書かれた粘土板と碑文で知られている。初期のギリシア文字は,右横書き,左横書き,牛耕式などで記された。

【出典】 中西 (1980)

ロンゴロンゴ文字

ロンゴロンゴ (ラパ・ヌイ語: Rongorongo, [ˈɾoŋoˈɾoŋo]) は,イースター島で19世紀に発見された,文字あるいは原文字とも見られる記号の体系。

【出典】 http://www.pacal.de/rapanui_en.html
「倒立牛耕式」テキストは左下に始まり左上に終わる。倒立牛耕式(inverse boustrophedon)と呼ばれる文字配列をとる。各行は左から右に横書きされている。奇数行の文字は正立しているが,偶数行の文字は倒立している。したがって,各行の終わりで文字板を180度回転し,天地を逆転させて読むことになる。⇒ ロンゴロンゴ文字

ルーン文字牛耕式碑文

数字は読み進む順序を示す。まず7から9を先に読む。⇒ ルーン文字


縦書き


東アジアでは古くから中国の漢字によって上からの縦書き・行は左へ移る,が決定され,この伝統的書字方向に影響された文字が多く出現した。西アジアの文化が強い波動を及ぼしてくると,満蒙民族は西アジアの音符文字の原理を用いて,自己の言語を写すことになった。ただし,西アジアの横書き文字が一旦東アジア地域に入ると,何時の間にか漢字の体制に同化されて縦書きに変わった。

右縦書き

縦書き(縦組み)は,日本語本来の記法である伝統と矜持と共に,書道作品のほとんど,国語の教科書,文芸(小説,詩歌,戯曲など),新聞などで用いられる。
《右横書きを採用する文字》 西夏文字契丹文字女書(右図),チュー・ノム(𡨸喃),ハングル(現在は左横書きが普及),日本のかな文字も縦書きである。

Kulitan

フィリピンのルソン島中部パンパンガ州およびタルラック州を中心に話されているパンパンガ語 (Kapampangan) を表記するために考案された文字。パンパンガ語の話者は 230 万人ほどで,フィリピンではセブアノ語・タガログ語・イロカノ語・ヒリガイノン語・ワライ語・ビコール語に次ぐ大きなグループをなす。この文字は, 8 世紀頃から東南アジアで用いられたカウィ文字 (Kawi) を起源とするものである。
【出典】 Omniglot Kulitan | Baybayin Modern Fonts

左縦書き

モンゴル文字で表記されるモンゴル語は,左から右へと行を進める左縦書きを使用する。これは,モンゴル文字がソグド文字系統のウイグル文字から派生したことに由来する。これらの文字は,もともと右横書きされていたが,漢字の書記体系に影響をうけ,反時計回りに 90 度回転した形の左縦書きとなった。
《左縦書きを採用する文字》 モンゴル文字,満州文字,パスパ文字,ソグド文字,ウイグル文字など

モンゴル文字

下図は,フフホトの市街に見られるスローガンで,漢語とモンゴル語の二重表記になっている。下のモンゴル文字は左より右へ行の移る縦書きだが,一語毎に改行しているので一見左からの横書きにみえる。

【出典】 中西 (1994)

縦書きするモンゴル文字を 90 度反時計回りに回転して横書き文字の中に挿入する例が見られる。

【出典】 Tűvšin, Č. (2012)Тод бичгийн сурах бичиг. (Улаанбаатар : "Урлах Эрдэм" ХХК)

パスパ文字・シベ(錫伯)文字

左:パスパ文字と漢文を併記した『増封东安王诏书碑』。右:『锡伯 (满) 语词典』序文。 ⇒ シベ文字

【出典】 左:蔡美彪编著(2004)『八思巴字與元代漢語 増订本罗常培』(北京 : 中國社会科学出版社)。右:佟玉泉 [ほか] 整理(1987)『锡伯 (满) 语词典』(乌鲁木齐 : 新疆人民出版社)

ウイグル文字

アラム文字から派生したウイグル文字は,元来右横書きであったが,中国に入ると 90 度反時計回りに回転し,左縦書きを採用するようになった。図は,モンゴル皇帝グユクがローマ教皇インノケンティウス 4 世に宛てた勅書に 2 ケ所捺されていたウイグル文字モンゴル語による印璽の朱印部分を複製したもの。
【出典】 モンゴル文字

ソグド文字

ソグド文字は,シリア文字(あるいはアラム文字)から派生した,中央アジアのソグディアナで用いられたソグド語を表記するための文字。ウイグル文字やモンゴル文字の元となった。

【出典】 Sogdian alphabet

エラム文字

エラム語は,3種類の文字で書かれている。最古のものはエラム絵文字で,今なお未解読であるが,その粘土板の出土地からエラム語を記したものであることは確実である。この絵文字より発展したエラム線文字も,現存する資料が少なく,同様になお未解読の状態である。エラム絵文字とエラム線文字をまとめて,原エラム文字(Proto-Elamite)と呼ぶ。一方,最後のエラム楔形文字で記されるエラム語は,古代メソポタミアの重要な言語の1つであり,アケメネス朝初期に至るまで広く使用された。【出典】山岡弘二 (2001)

【出典】 AncientScripts: Eramite

【出典】 Omniglot Proto-Elamite

左下縦書き

マンヤン文字

ハヌノオ・マンヤン族は,片刃の小刀の先で竹の表面をひっかくようにしてマンヤン文字を書く。竹筒や竹片の端が水平に前方をさすようにもう片方の端を片手でつかみ,腹のちかくに寄せる。横書きになるように腹のちかくからとおく(日本式にいえば下から上に),そして行は左から右に移動させるる。日本人の感覚で言えば,横書きの原稿用紙を 90 度左にまわして書くようなものだといえる。なお,左利きの人が書くと,文字がすべて逆向きになるという(下図)。サンスクリット文字の系統をひく音節文字の使用は,今日,ハヌノオ・マンヤン族のほかに,ブヒッド族(ミンドロ島)とタッグバヌワ(パラワン島)の間にみられる。ハヌノオ族にとっては,個々の文字の向きはさして重要ではない。自分の目の前から読もうが,反対から見ようが,逆さまに見ようが,その文字は誰にでも読めるのである。ローマ字(ラテン文字)の学習の際に,ハヌノオ族以外のものにとって時に奇妙に映ることが起こる。ハヌノオ族はローマ字で書かれた本を,しばしば,逆さまにして読むのである。⇒ マンヤン文字

【出典】 宮本 (1985)

バタク文字

バタク文字は,インドネシアのスマトラ島で用いられるバタク語を表記する文字。カロー,シマルングン,トバの部族によって多少表記が変化する。 文字系統としてはインド系文字に分類される。
【出典】 Diringer (1996)

右下縦書き

ティフナグ文字

北アフリカのベルベル人が用いるティフナグ文字は,右下から上に,行は左に進んで記述される。これは,書き手が下方から,手の届くだけ上方に書き,次にまた下方から書くことを示している。書き手によって身長は違うから,出発点を下端にしているためである。【出典】矢島 (1997)


縦書き・横書き併用


日本語

日本語は,書字方向の自由度が高く,バラエティに富む点で,現行の文字体系の中では世界的に稀有の存在である。現代のシステムは,縦書き(左へ行移り)主体・左横書き併用,左横書き主体・縦書き(左へ行移り)併用があり,同一紙面・誌面で記事・コラムごとに違うシステムが共存していることも多い。日本語の表記は,各単字の正立像は回転させず,そのままで縦書き・横書きに用いられる。【出典】 屋名池 (2013)

幕末から明治にかけての,西洋文化の直輸入をめざした人々も,日本語はあくまで縦書きという観念に支配されていた。欧文との共存をはかって登場した新しい書字方向は,左横書きの欧文に合わせるため和訳の箇所を縦組み(正確には縦組みを横に転倒させたもの「横転縦書き」)としたものである。最初から横組みにすることなど,思いもよらなかったのであろう。
【出典】 紀田 (1994) 下図『横文字独学』(青木輔清著 中外堂 明治 4 年)では左縦書きも採用している例である。(惣郷 1970)

横転縦書きは,明治 30 年ぐらいまで続いたが,外国語の発音を示すカタカナや語義の注など,便宜的な部分が一部横書きとなった。その部分を「尻上がり」もしくは「尻下がり」に組んで,アクセントを示した例もある。
【出典】『ウヰルソン第二リードル独稽古』(1885)紀田 1994 惣郷 1970

左図は,第四代「足利義持像」(右,1414 年賛),第六代「足利義教像」(左,15 世紀後半)の肖像がであるが,違いは人物の向きだけではなく,上部に禅僧の賛があるが,これが逆方向に行移りしてゆくのである。 賛の行の進行方向は,実は人物の顔の向きによって決まっている。この当時,「画賛は描かれた人物の顔の向いている方が先頭行になる」( 顔が左向き:左から右へ読んでゆく,顔が右向き:右から左へ読んで行く)という規則が存在していた。このことから,当時 2 種類の行移り方向があったとはいっても,両者は決して対等ではなく,左へ行移りする方が普通で,右移りは当時にあっても特殊な場合であった。【出典】 屋名池 (2002)

落語の周囲をゆるゆると描く「月刊落語通信」,ふきだしにも縦書き・横書きが併用される。

【出典】 IN☆POCKET 2014.08(講談社)

縦組に挿入する欧字の向き

縦組みの文章中に欧字を挿入する場合,2 通りの方法が考えられる。1 つは,欧字の向きを時計回りに90度回転し,欧字を横向きにして配置する。この方式で使用する欧字は,プロポーショナルの欧字とする。他方,欧字を 1 字 1 字を縦向きにして配置する方法がある。この場合,正しい向きで欧字が読めるというメリットはあるが,欧文では文字列全体を一度に読むといった読み方をする場合が多く,読むのにやや苦労する。

【出典】 縦組に挿入する欧字の向き

古代エジプト文字

古代エジプトでは,ヒエログリフ(hieroglyph,聖刻文字,神聖文字),ヒエラティック(英: Hieratic; 神官文字),デモティック(民衆文字,Demotic)と呼ばれる 3 種の文字が使われていた。

・ ヒエログリフ

古代エジプト文字の書字方向は,横書きに左書き,左縦書きに右縦書きが,同一刻文で同時に用いられる例もあった。この場合,左書きと右書きでは文字記号の図形が対称的(つまりそれぞれ他方の裏返し,裏返しの左右対称)になっている。
この文字は記念碑的な刻文に使われることが多かったから,文字を美的効果(あるいは魔術的効果)を持つものとして配列することかしばしば行われた。縦書きが,横書きが,という問題も,主として空間の処理法としての美学的見地から扱われたように思われる。

【出典】 矢島 (1977),図 Nakanishi (1980)

・ ヒエラティック:The Story of Sinuhe

【出典】 Hieratic facsimiles of Berlin Papyri 10499 and 30222

・ デモティック


【出典】 Cohen (1958)

オガム文字

オガム文字が石に刻まれる場合は,下部から上向きに進み,縁の周りに沿って書かれた。 水平に書かれる際は,左から右に刻まれた。⇒ オガム文字
【出典】 Diringer (1996)

ロロ(老彝)文字

ロロ文字の書字方向には様々な書式がある。甘相営のロロ文字の書き順には,横書きと縦書きの 2 種があり,両者は紙自体を90度まわせば同じ物なのである。つまり個々の字も 90 度回転している訳で,行が左から右へ移る縦書きの文章は,90 度右にたおせば,そのまま右から左へ横に読む文書となる。【出典】 中西 (1994) ⇒ 規範彝文

【出典】 西田 (2002)
【出典】 Diringer (1996)

突厥文字

突厥文字の多くは,右から左に横書きされ,上から下に行を追っていたが,「オルホン碑文」などは漢文の影響からそれを左に 90 度回転させて縦書きされ,上から下に読まれる。また,右に回転させて下から読む碑文もある。ただ,岩や丸石に記されたものは比較的自由な表記の方向をとっている。⇒ 突厥文字


【出典】 左:Bilge Khagan's memorial拡大] 右:An ancient tuukic lithograph


渦巻き型・他


ファイストスの円盤

「ファイストスの円盤」に認められる渦巻き方向は,エジプト文字・ヒッタイト象形文字の例にならって顔に向かって読めば,書字方向は渦巻きの外から内へとなる。⇒ ファイストス円盤文字

エトルリア文字鉛銘板

エトルリア文字とは,古代イタリアのエトルリア語を表記するための文字。西方ギリシャ文字(エウボイア文字,クマエ文字)から派生した。当時の古代イタリア諸語の文字を総称して古イタリア文字とも言う。古ラテン語の時代のラテン文字の形成にも影響を与えた。またルーン文字の形成にも影響を与えた。下図は,イタリア・トスカーナ州マリアーノ出土した鉛製銘板。左:表,右:裏

【出典】 Dringer

初期ヘブライ語による呪文と最古の古ラテン語資料

左図:鉢に書かれた初期ヘブライ語による呪文(8 世紀,バビロン出土)。右図:最古の古ラテン語資料,ローマ市クイリナーレ丘出土の Duenos 碑文(紀元前 6 世紀)

【出典】 Dringer

イベリア文字

紀元前 5 世紀から紀元 1 世紀半ば頃にかけて,イベリア半島の南部から東部を経てフランス南東部に至る地中海沿岸に存在した刻文文字を,「イベリア文字」と総称する。ローマ帝政期に死語となった非印欧語系のイベリア語の表記人主として用いられた。右図は,南部イベリアで使われたタルテソス文字(escritura tartesia)と呼ばれる文字である。
【出典】 寺崎英樹 (2001)。Southwest Paleohispanic script

ブギス文字

ブギス文字は昔は行替えを行わず,テープ状に長く張り合わせた椰子の葉に物語の終りまで 1 行で書いたそうである。左図は,行替えが行われているが,昔の名残に行が途中でおれながってなるべく行替えをしないように書かれている。
【出典】 中西 (1994)

マヤ文字

マヤ文字は,主として紀元2世紀頃からマヤ地域で使用された一種の象形文字である。マヤ文字の読み順は,上から下へ,左から右へ,二列が対になって読まれていく。


【出典】 八杉(2003)。Wikipedia Maya script

文字の構成

文字は,複数の文字素からなり,ふつう,大きな文字素(主字)にちいさな文字素(接字)がくっついてできていて,左上にある文字素から読む。

【出典】 八杉 (2003)

【出典】 AncientScript


縦組み・横組み


「横組」とは,文字組版において,文字の中心を縦方向にして,読む向きを横に並べて版面を構成すること。手書きの場合には 横書きといい,反対に,縦方向に版を組むことを「縦組」という。文字の書字方向と組版には,緊密な関係があるが,ラテン文字・アラビア文字・インド系文字など横書きを用いる言語圏では,特に「横組み」という意識は薄いであろう。

右綴・左綴

書字方向は本の仕立てと密接な関係がある。冊子本の場合,前ページ末尾の文字と次ページの最初の文字が最短になるような綴じ方が最も読みやすい。普通の左へ行移りする縦書きなら,ページ右上から始まり左下で終わるので,右綴じが最も無理がない。左上から始まり右下に終わる左横書きなら左綴じが最適ということになる。【出典】 屋名池 (2003)


特殊な例として,邦文と欧文の論文を各数編ずつ収録するような論文集の場合,邦文を縦書きにしていると,本を左右両側から開くようになり,奥付も2つ付ける例もある。また,左横書きされるシロティ・ナグリ文字では,ページは右から左に順に振られ,右綴じになっている。

絵巻物

日本の絵巻(詞書を伴わない,絵のみのもの)は各場面が右から左に展開してゆく。この順序は,縦書きの行が右から左へ儀行移りしてゆくという,日本語の伝統的な書字方向に慣れた人たちが,絵の場面を連続させるにもその方向性に準拠したからにほかならない。鑑賞方法は,作品を机などの上に置き,左手で新しい場面を繰り広げながら,右手ですでに見終わった画面を巻き込んでいくというものである。
一方,左横書きの文字を用いる言語の地域では,日本と逆に,各場面が左から右へ展開してゆくことも書字方向への準拠を示している。古代ローマの「トラヤヌス帝の記念碑」の浮き彫り(柱をめぐって下から螺旋状に上昇してゆくが展開すれば横長の長大画面)や,ノルマンのイングランド征服を描いた「バイユーのタペスロリー」などは,そうした典型的な例である。【出典】 屋名地(2006)

表紙

言語の書記方向に準拠して,表紙に描かれる人物の向きも異なる場合もある。

ラテン文字等の縦書き

横組方式の問題点に,書籍の背文字とか立て看板など,縦長の空間しかないところで使う場合,日本語・中国語等では,文字が基本的に正方形で縦組み・横組とも使い分けることができるため,文字を回転させるなどの問題はない。しかし,ラテン文字・アラビア文字などで書かれるタイトルを縦に配置せざるを得ない場面で次のような方法が取られることがある。
  • 文字の向きを変えずに 1 文字ずつ縦に配置する。これは日本語の右横書き同様,「1 文字ずつの横書き」とみなせる。横方向は左から右が原則なので,改行する時は右行に行く。立看板や柱などに書くときに見られる。下中央(アラビア文字)・右図(デーヴァナーガリー文字)参照。
  • 横書きの行全体を左に 90 度倒す。行の方向は下から上となる。ドイツ語・フランス語の書籍の背表紙などに見られる。この場合,改行後は右行に行く。ただし,下左図のアラビア文字の場合は,書字方向は上から下になる。
  • 横書きの行全体を右に 90 度倒す。行の方向は上から下となる。英語の書籍の背表紙や,縦書きで書かれた日本語の文章中に欧文を交ぜる時などに見られる。この場合,改行後は左行に行く。

ぶらさげ組み

句読点(本来は行頭禁則字)に限り,行末を超えた位置に来ることを許容する方式。活版,写植の手作業では,これにより禁則処理の必要回数を減らせたから,能率が向上するという効果があった。ただし,本来は縦組みについて行われてきたもので,横組みには用いるべきではないとするのが長らく定説となっていた。その一方で,ぶらさげ組みを許容することにより,禁則処理の頻度が減らせることから,現在では横組みにも拡張され,普遍的に行われるに至っている。
【出典】 藤野 (2004)


コンピュータ処理と書字方向


ユニコード・フォント

Unicode フォントには,各文字の通常の書字方向に基づいて,書字の方向性が定められている。例えば,欧米の文字は左横書き(Left to Right: LTR / LR),中東圏の文字は右横書き(Right to Left: RTL / RL)である。Unicode のこの仕様を,双方向アルゴリズムまたは BiDi (Bi-Directional)アルゴリズムと呼ぶ。また,高度なリガチャ・アクセント付加・ 位置異形の処理に関する情報ももち,それらを自由に使うことが可能になっている。
Unicodeフォントを用いる最近のエディターやワードプロセッサーでは,言語キーボードを切り替えることにより書字方向と対応するフォントを変更し,さらに,異なる書字方向の言語を混在した文章を作成することが可能である。縦書きの場合も,右図に示すMicrosoft Word 2013の文字列方向を指定する箇所から,右縦書き・左縦書きを選択することも可能である。 【参照】 多言語環境の設定

Web 上における書記方向

左右混在

dir 属性は,書字方向を指定するための HTML 属性である。値 ltr は文字を左から右へ,rtl は文字を右から左へ表記する。
Good morning <span dir="rtl" lang="ar">صباح الخير</span> (ṣabāḥul kẖayr)
Good morning صباح الخير (ṣabāḥul kẖayr)
一方,世界<span dir="rtl">言語博</span>物館 と属性を指定すると,「世界言語博物館」のように,書字方向は変わらない。これは,上で述べたように,漢字には左横書きという方向性が定められているからである。このような場合は次の direction プロパティを用いる。

direction プロパティは,書字方向を指定するための CSS プロパティである。
地球<span style="direction:rtl;unicode-bidi:bidi-override;">ことば</span>村
地球ことば

縦書き

ウェブページでの縦書きは,ウェブブラウザの機能により表示が異なる場合がある。左側の例文は Internet Explorer での縦書き指定方法による表示,右側は Google Chrome, Opera などのケースである。なお,Firefox は縦書きに対応していない。本格的に縦書きを実現仕様とする場合は,ウェブページで縦書きレイアウトなどを参照。

<div style="writing-mode:tb-rl; height:200px;">
すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
</div>
<div style="-webkit-writing-mode:vertical-rl; height:200px;">
すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
</div>

モンゴル語

下図は,Internet Explorer によって左縦書きモンゴル文字文章を表示したものである。HTML 文書内でのスクリプトの指定は次の通り。
Internet Explorer<div style="writing-mode:tb-lr;">
Chrome, Opera など<div style="-webkit-writing-mode: vertical-lr;">

Internet Explorer 以外のブラウザーをご利用の方は,以下の表示はどのようになっているでしょうか。Google Chrome,Opera などでは,縦書きになるが,個々の文字が90度回転し,ユニコード・フォントで定義されている語頭・語中・語末の字形を選択する機能を利用することができない(訳の日本語は正しく表示可能)場合があります。なお,ブラウザーで,スクリプトやActiveコントロールを実行しないように設定していれば,それらを解除してください。
  ᠲᠡᠦᠺᠡ᠋ ᠶᠢᠨ ᠪᠠᠭᠰᠢ ᠪᠠᠰᠠᠩᠺᠦᠦ ᠮᠠᠨ᠍᠋
ᠤ᠋ ᠠᠩᠭᠢ ᠳ᠋ᠤ ᠺᠢᠴᠢᠶᠡᠯ ᠣᠷᠤᠬᠤ ᠪᠣᠯᠭᠠᠨ ᠳ᠋ᠠᠭᠠᠨ « ᠮᠣᠩᠭᠣᠯ ᠶᠣᠰᠤ ᠵᠠᠩᠰᠢᠯ ᠢᠶᠠᠨ ᠰᠠᠶᠢᠨ ᠮᠡᠳᠡᠳᠡᠭ ᠡᠪᠦᠭᠡᠳ ᠺᠦᠭᠰᠢᠳ ᠡ᠌ᠴᠡ ᠡᠷᠲᠡᠨ ᠌ᠡ᠌ᠴᠡ ᠤᠯᠠᠮᠵᠢᠯᠠᠯ ᠲ᠋ᠠᠢ ᠦᠨᠳᠦᠰᠦᠨ ᠦ᠌ ᠪᠡᠨ ᠵᠠᠩ ᠵᠠᠩᠰᠢᠯ ᠤ᠋ᠨ ᠲᠠᠯ ᠠ ᠪᠠᠷ ᠨᠡᠷᠡᠯᠺᠡᠯᠭᠦᠢ ᠰᠠᠶᠢᠨ ᠠᠰᠠᠭᠤᠵᠤ ᠲᠡᠮᠳᠡᠭᠯᠡᠵᠤ ᠡᠠᠪᠤᠪᠠᠯ ᠬᠣᠵᠢᠮ ᠳ᠋ᠠᠭᠠᠨ ᠺᠡᠷᠡᠭ ᠪᠣᠯᠵᠤ ᠮᠡᠳᠡ᠊ᠨ᠎ᠡ ᠰᠢᠦ ᠳᠤᠰᠤᠯ ᠢ᠋ ᠬᠤᠷᠢᠶᠠᠪᠠᠯ ᠳᠠᠯᠠᠢ᠂ ᠳᠤᠭᠤᠯᠤᠭᠰᠠᠨ ᠢ᠋ ᠬᠤᠷᠢᠶᠠᠪᠠᠯ ᠡᠷᠳᠡᠮ » ᠭᠡᠵᠤ ᠶᠠᠭᠤᠮ ᠠ ᠯᠠ ᠪᠣᠯ ᠺᠡᠯᠡᠳᠡᠭ ᠪᠠᠶᠢᠵᠢ ᠪᠢᠯᠡ᠃

[転写]
teüke-yin baγsi Basangküü man-u anggi-du kičiyel oruqu bolγan-daγan «mongγul yosu ȷ̌angsil-iyan sayin mededeg ebüged kögsid-eče erten-eče ulamȷ̌ilal-tai ündüsün-ü-ben ȷ̌ang ȷ̌angsil-un tal-a-bar nerelkelgüi sayin asaγuȷ̌u temdegleȷ̌ü abubal qoȷ̌im-daγan kereg bolȷ̌u meden-e siü, dusul-i quriyabal dalai, duγykyγsan-i quriyabal erdem» geȷ̌ü yaγum-a la bol keledeg bayiȷ̌i bile.

[キリル文字]
Түүхийн багш Баасанхүү манай ангид хичээл орох болгондоо : “Монгол”ёс заншлаа сайн мэддэг ѳвгѳд хѳгшдѳѳс эртнээс уламжлалтай үндэснийхээ зан заншлын талаар нэрэлхэлгүй сайн асууж тэмдэглэж авбал хожимдоо хэрэг болж мэднэ шүү. Дуслыг хураавал далай Дуулсныг хураавал эрдэм” гэж юм л бол хэлдэг байж билээ.

[訳]
歴史の先生バーサンフーは、私たちのクラスで授業をするたびに、「モンゴルの習慣をよく知っている老人たちに、昔から伝統的な民族の風俗習慣のことを遠慮しないで、しっかり聞いていて記録しておけば、将来に役立つかもしれないぞ、〈滴を集めれば海、聞いたことを集めれば学〉」としょっちゅう言っていたものだよ。

【出典】 塩谷 (2011)。使用フォント:Mongolian White


関連リンク・参考文献

  • 縦書きと横書き | Right-to-left | Horizontal and vertical writing in East Asian scripts | Bi-directional text
  • W3CWorking Group Note 日本語組版処理の要件(日本語版)
  • Omniglot Writing direction index
  • CyberLibrian 書字方向
  • Cohen, Marcel (1958) La grande invention de l'écriture et son évolution. (3 v., Paris : Imprimerie nationale)
  • Diringer, David. (1996) The alphabet: a key to the history of mankind. 2 v. (Hutchinson)
  • 紀田順一郎(1994)「縦のものを横にする」『日本語大博物館』(ジャストシステム)
  • 塩谷茂樹(2011)『モンゴル語』(大阪大学出版会)
  • 惣郷正明(1970)『図説日本の洋学』(築地書館 ; 丸善 (発売))
  • Nakanishi, Akira. (1980) Writing systems of the world. (Charles E. Tutlle)
  • 中西亮(1994)『文字に魅せられて』(同朋舎出版)
  • 西田龍雄(2001)「ナシ象形文字」,「ゴバ文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
  • 西田龍雄(2002)『アジア古代文字の解読』(中公文庫 B7 20)
  • 寺崎英樹 (2001)「イベリア文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
  • 宮崎市定 著 ; 礪波護 編(1998)「歴史的地域と文字の排列法」『東西交渉史論』(中央公論社)
  • 宮本勝(1985)「フィリピンのマンヤン文字」『月刊みんぱく』(1086.6 129)
  • 矢島文夫(1977)『文字学のたのしみ』(大修館書店)
  • 八杉佳穂(2003)『マヤ文字を解く』(中公新書 6444)
  • 屋名池誠(2003)『横書き登場』(岩波新書 863)
  • 屋名池誠(2006)「縦書きの奇妙な世界―縦書き・横書きの日本語史」『図書』((60) 639)
  • 屋名池誠(2013)「書字方向の存在意義を文字の本質から考える」『日本語学』(32(5)=408(臨増))
  • 山岡弘二(2001)「エラム文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
  • 藤野薫 編(2004)『便覧 文字組みの基準―デジタル時代の文字組版ガイド』(日本印刷技術協会)
[最終更新 2014/11/25]