線文字A 英 Linear A
杯の内側に螺旋状に刻まれた線文字A [Arthur Evans / Public Domain / 出典] |
線文字Aの資料としては,ミノア時代の王宮の財政的記録と見られる粘土製の書版が主なものであるが,そのほかに,封印用に使われた 1 ないし 2 文字を刻んだ小さな粘土盤 (cretulae),粘土塊 (nodulae) および押印 (seals) の類,またそれとは別に,粘土,石,金属製の主として宗教的な奉納物などに記された刻文や壷面の記銘などがある。 [2]
セム語であれ印欧語であれ,線文字Aを既知の言語に結び付けて解釈しようとするこれまでの試みは,いずれも確実な結論に到達したというにはほど遠い。すでに 19 世紀以来,大方のギリシア学者の間で定説となってきたように,ギリシア語以前の古いエーゲ世界の言語が,セム語でも印欧語でもないある未知の,しかも系統的に孤立した言語層に属するとすれば,線文字Aも当然これにつながる言語である可能性が高いといわれる。 [3]
文字資料
これまでに発見された線文字Aの資料は,ゴダールとオリヴィエ (Godart & Olivier, 1976~1985) による 5 巻本の資料集として集大成された。[4] これは,テキストの原寸大の写真,それの模写 (facsimile) と実物転写,および標準文字による転写からなり,最終巻には標準化された文字表と索引および補遺が含まれ,現在最も信頼できる線文字Aの資料集である。 [5]
[Godart, L. & J.-P. Olivier, Text 16] |
[Godart, L. & J.-P. Olivier, Text 170] |
注
- ^ 松本克己 (2001)「ミノア線文字A」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 977.
- ^ 松本, p. 977.
- ^ 松本, p. 988.
- ^ Godart, L. & J.-P. Olivier (1976-1985) Recueil des Inscriptions en Linéaire A, 1-5 (Ecole française d'Athènes: Etudes crétoises, 21, P. Geuthner) Volumee 1 École Française d'Athènes
- ^ 松本, p. 978.
関連リンク・参考文献
[最終更新 2021/11/10]