漢字 ― 変用漢字・変形漢字
日本の文字
カイダー字
カイダー字という象形文字が使用されたのは主に沖縄の与那国島と竹富島であった。言語を完全に表すのではなく,主に数量や所有関係を表すために,人頭税の時代に記録として使われたものである。数量記号の中に明らかな漢数字の混入も見られる。
1910年代にはまだ使われていたと思われるが,1930年代にはすでにまれであった。現在,カイダー字が使われていた時代を覚えている人は老人に限られ,その数はきわめて少ないし,書かれたものは籠の蓋や板札と紙数枚ずつしか残っていない。
カイダー字の種類は, 1)家紋のように屋号を示すダーハン(家判), 2)スーチューマに基づいた数量を示す文字,そして 3)島民が独自に作った象形文字である。
下図は,ある一家が5月29日に保有していたもの,あるいは寄付したものの記録と思われる。[出典] マーク・ローザ(2009)「八重山象形文字・カイダー字の新しい発見」『月刊みんぱく』(国立民族学博物館,2009年7月,通巻382号)
【カイダー字フォント】 マーク・ローザ氏によるカイダー字フォント(ベーター版)を使用。ユニコード版が予定されている。
【参考文献】
- Rosa, Mark (2007) Kaida Character Dictionary. 『東京大学言語学論集 26』
- マーク・ローザ(2011)「知られざる沖縄のカイダー字」町田和彦編『世界の文字を楽しむ小事典』(大修館書店)
- 萩尾俊章(2009)『与那国島のカイダー字をめぐる一考察』(与那国島総合調査報告書、沖縄県立博物館・美術館)
- 外間守善(2000)『沖縄の言葉と歴史』(中央公論新社)
朝鮮製漢字
韓国の国字は既に存在している漢字の音で表現できない音を表すことが出来るように作られた文字,吏読などで使われた慣用句を書くため作られたもの,そして韓国の固有の文化の概念を表す文字などに区分される。それ以外に既存の字に新たな音とか訓を付けて使用することもある。[出典] Wikipedia 《朝鮮における漢字》
【使用フォント】 ユニコードのCJK統合漢字拡張Bをカバーするフォントを用いる。例:《花園明朝B》,《MingLiU-ExtB》,《Adobe-Japan 1-6》
畓 | 답 /dap/ | 水田(韓国で田は畑の意味) |
媤 | 시 /si/ | 主人の家 |
曺 | 조 /jo/ | 姓の一つ(曹の略字) |
㕦/夻 | 화 /hwa/ | 怒り |
巭 | 부 /bu/ | 労務者(功夫の合字) |
頉 | 탈 /tal/ | 変事/病気 |
𡅕 | 희 /hui/ | 嬉しさ/長寿を祈ること(囍とは別) |
䭏 | 편 /pyeon/ | 餅 |
哛 | 뿐 /ppun/ | …だけ/…まで |
【朝鮮製漢字例】[出典] 青山秀夫, 熊木勉 編著『朝鮮語漢字語辞典』(大学書林, 1999)
【関連サイト】
- 小林昭美『朝鮮半島の漢字文化』(日本語千夜一話,48話夜)
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参考文献
- 阿辻哲次(1989)『図説漢字の歴史』(大修館書店)
- 河野六郎,永田英正,笹原宏之(2001)「漢字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- 笹原宏之(2001)「漢字圏の文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- 笹原宏之(2001)「日本の文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- 西田龍雄編(1981「世界の文字 」(講座言語. 第5巻. 大修館書店)
- 西田龍雄(1984)『漢字文明圏の思考地図』(PHP研究所)
- 西田龍雄(2001)「東アジアの諸文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- 西田龍雄(2002)『アジア古代文字の解読』(中央公論新社)
- 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所編(2005)『図説アジア文字入門』(河出書房新社)
漢字データベース・サイト
関連サイト