バサ文字 英 Bassa (Vah)
西アフリカ,リベリアの首都モンロビア(Monrovia)の東方で話されている,ニジェール・コンゴ語族大西洋コンゴ語派に属すバサ語の表記に用いられる。バサ語名称はヴァハ (Vah),また,文字順の最初の4文字をとってンニカセファ (Nni-ka-se-fa) とも呼ばれる。 [1]
1900 年代に,バサ人の医学者トーマス・フロ・ルイスが,ブラジルと西インド諸島に住んでいるバッサ起源の元奴隷がまだバサ・アルファベットを使っているということを発見した。(現在のバサ文字の基礎となった文字が過去に存在したとの伝承を裏付ける十分な証拠は今のところ見つかっていない。)この文字を知ったルイスはアルファベットを研究し,リベリアでこれを復活させようとした。ルイスはニューヨークのシラキュース大学留学からの帰路ドレスデンに立ち寄り,そこでバサ・アルファベットの印刷に必要な機材の調達を製造会社に依頼した。1930 年頃には,すでに印刷された小冊子・パンフレットの類が存在した。 また,彼は学校を建て,バサ・アルファベットの普及に取り組んだ。1950 年にバサ・ヴァハ協会(The Bassa Vah Association)が設置され,バサ文字の普及とテキスト出版などの活動を行っている。 [2] [3]
文字構成
バサ文字は単音式の表音文字である。子音字 23 文字と母音字 7 文字に加え,5 つの声調記号をもち,左から右へ横書きされる。 ただし,完全な 1 文字 1 音素対応ではなく,厳密な意味でのアルファベットにはなっていない。バサ語には 24 の子音音素,7 つの口母音音素,5 つの鼻母音音素が報告されているが,/ɓ/ と /m/,および /ɲ/ と /dy/ が同じ文字で表記され,さらに,一般的には音素と認められていない /r/ を表す文字がある。鼻母音は,母音文字の後に /n/ を表す文字を書き足して表記される。 [4]
バサ文字表 [5]
声調
声調記号は,高・中・低の 3 つの平声調,および中低と高低の 2 つの降り声調を,母音の内部に小さな記号を付して表記する。 [6]
バサ語テキスト
サンプルテキスト
Sample of “classic” printed style Bassa Vah text. [7] |
テキスト入力
次の表は,バサ文字用フォン JG Bassa Vah の配列(Handwriting, Print)を示す。しかしながら,バサ文字用の仮想キーボードなどは存在しないので,上掲の文字表が表示可能なソフト,あるいは,BabelMap などのユーティリティーを利用して文章を入力する。【参考】 多言語環境の設定
注
- ^ 塩田勝彦 (2001)「バサ文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂 p. 722.
- ^ 塩田 p. 722.
- ^ [Wikipedia: Bassa Vah script
- ^ 塩田 p. 723.
- ^ Everson, M., C. Riley (2010) Final proposal for encoding the Bassa Vah in the SMP of the UCS. ISO/IEC JTC1/SC2/WG2 N3941R Figure 2, p. 5.
- ^ 塩田 p. 723.
- ^ Everson: Figure 7, p. 8.
関連リンク
- Bassa alphabet | Bassa language
- Omniglot: Bassa (Vah) alphabet
- ScriptSource: Bassa Vah