オル・チキ文字 英 Ol Chiki
サンタール語独自の文字として考案されたのがオル・チキ文字である。サンタール語は,オーストロアジア語族(Austro-Asiatic)の中のムンダー(あるいは,コール)諸語に属する言語。インド亜大陸にドラヴィダ族やアーリア族が移住してくるはるか以前から住んでいた原住民のうち,最大のグループを形成するサンタール族によって話されている。サンタール語には固有の文字はなく,民話や詩などの口承文学しか伝わっていなかったが,19 世紀に入ると,キリスト教の宣教師たちが布教を初め,サンタール族に,ベンガル文字やローマ字によって自分たちの言語を書き表すことを教えた。 [1]
オル・チキ文字はラグナート・ムルム (Raghunath Murmu) という,オリッサ州マユルバンジ(Mayurbhanj)県ドールボス村生まれの一人のサンタール人によって考案された。考案にあたっては,文字の読みとその意味に連関させる表意的な文字を使い,単一の子音や母音と対応させる表音文字として使用するという方法で,記憶の便宜を図った。 [2] オル・チキ文字考案とその背景については,「地球ことば村《世界言語博物館》」『サンタル語』を参照。
オル・チキ文字と発音
数字
文字の意味と由来
オル・チキ文字の読みには意味があり,文字の形はその意味を象っているという。例として,ザイデ (Zide, 1996) [3] に掲載されている図によって,左から文字の意味を説明する。
- [e] この文字は,le「膨らむ」という状態を表す図から作成。
- [ep] は「出会う」を意味し,この文字は出会いをイメージした図から作成。
- [eɖ] は「指す」を意味し,この文字は指で場所を示す図から作成。
- [en] は「脱穀」を意味し,この文字は足踏み脱穀をしている図から作成。
- [eɽ] は「避ける」を意味し,この文字は道の障害物を取り除く図から作成。
サンタール語テキスト
サンプルテキスト
テキスト A Santali News Paper
サンタール語ラテン文字例文
例文は「マタイ福音書6:9-13」。 [4]
テキスト入力
オル・チキサイト で提供しているオル・チキ文字フォントは通常の英数字の位置(ASCII 文字コード)に配置されている(非ユニコード)。閲覧には同サイトで使われているフォント Ol Chiki Font が必要である。
オル・チキ文字入力方法
フォントをダウンロードするとキーボードマップ keyboard.jpg が添付するのでそれを参照して文書を作成する。
ユニコード
ユニコードでのオル・チキ文字は U+1C50..U+1C7F の位置に収録されている。Noto San Ol Chiki
注
- ^ 奈良毅 (1993)「サンタール語」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂『補遺・言語名索引篇』三省堂
- ^ 長田俊樹 (2001)「オル・チキ文字文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 206.
- ^ Zide, Norman H. (1996), “Scripts for Munda Languages”, in Peter T. Daniel &: William Bright (eds.), The World's Writing Systems (Oxford University Press, New York/Oxford)
- ^ Aboren Probhu ar Babancaoic' Jisu Masi Reak' Nama Niam.Junani parsi khon hor parsite torjoma akat'. [1966], Bible Society of India, Bangalore. [The New Testament with references in Santali.]
関連リンク
- Ol Chiki script
- Omniglot Santali alphabet (Ol Cemet'/Ol Chiki)
- a portal for Santals (閲覧には前掲ポータルサイト提供のフォントが必要)
- 長田俊樹 (2005)「文字を持たずんば言語にあらず」『言語 34 (10)』