グジャラーティー文字 Gujarātī lipi 英 Gujarati
北西インドのグジャラート州で話されるグジャラーティー語とカッチー語を表記するのに用いられる文字。古デーヴァナーガリー文字の西部系に属し,文字体系としてはデーヴァナーガリー文字とほぼ同じであるが,字形は全体にそれよりも丸みを帯び,デーヴァナーガリー文字の上の横棒をもたない。この文字による一番古い現存資料は,手書きのものでは 1592 年の文書であり,印刷されたものでは 1797 年の広告である。 19 世紀の中頃までグジャラーティー文字は主として手紙や簿記に用いられた。[1] 商人たちにより用いられるとき,母音の表記が大幅に略されることが多く,その体系はボーディー文字と呼ばれる。[2]
文字構成
音節は,母音字母・記号,子音字母および記号から構成される。
pratiṣṭhā (名声) の構成要素 | ||||||||
પ | ્ | ર | ત | િ | ષ | ્ | ઠ | ા |
U+0AAA | U+0ACD | U+0AB0 | U+0AA4 | U+0ABF | U+0AB7 | U+0ACD | U+0AA0 | U+0ABE |
PA | VIRAMA | RA | TA | I | SSA | VIRAMA | TTHA | AA |
母音字・母音記号
母音は短母音と長母音に分類される。
子音字
子音を表す文字は,本字と結合文字に分類される。そして前者は調音法によってさらに下位区分される。子音字は,そのままでは,常に母音 a を伴っている。そのため子音だけを表したいときはヴィラーマ(後述)という記号を付加する。
閉鎖音・鼻音
その他
子音結合字
子音結合字を入力する方法は,第一子音字,ヴィラーマ(U+0ACD),後続の子音字を順に付け加える。
補助記号
数詞字
テキスト
サンプルテキスト
《訳》シュロヤシの葉に書く二つの方法がある:(1) 墨で書く北インドの方法と (2) 鋭い針で文字を刻み後でその線に墨またはすすを入れる方法。グジャラートでは最初の方法で書かれたシュロヤシの葉がみられる。[3] |
テキスト入力
ユニコード
グジャラーティー文字のユニコードでの収録位置は U+0A80..U+0AF0 である。
注
- ^ Bright, William / 家本太郎・内田紀彦訳 (2013)「グジャラーティー文字」Peter T.Daniels, William Bright [編], 矢島文夫 総監訳, 石井米雄, 植田覺, 佐藤純一, 西江雅之 監訳『世界の文字大事典』朝倉書店, p. 411.
- ^ 坂田貞二 (2001)「ボーディー文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, ボーディー文字 Boḍī lipi はグジャラーティー文字の変形体で,グジャラート地方の商人たちが,グジャラート語で記帳・通信するときに用いた。名称は「短縮・簡略化された(文字)」の意。字形はグジャラーティー文字に似るが,語頭の母音は2つないし3つのみを表記でき,その他の位置では母音の表記ができない。ボーディー文字は, vāṇīo (商人), sarrāf (銀行家,金貸し)などが好んで使うため,バーニーアーイー文字(Baniāī lipi),サルラーフィー文字(Sarrāfi lipi)ともいわれる。p. 918.
- ^ Bright. p. 441.
関連リンク・参考文献
- グジャラーティー文字 | グジャラート語
- 中西コレクション(国立民族学博物館)グジャラーティー文字
- ScriptSource Gujarati
- 中西印刷株式会社「世界の文字」グジャラート文字
- 内藤雅雄 (2001)「グジャラーティー文字」町田和彦編『華麗なるインド系文字』白水社, p. 172-173.
- イランから,グジャラート州南部に移住したゾロアスター(パールシー)教徒も,ペルシア語の影響を受けた語彙を多数含むグジャラート語を使用した。下の例は,1864年に刊行された『マルコによる福音書』I. 1-4 である。
出典:Nida, Eugene A. ed.. (1972) The book of a thousand tongues. (United Bible Societies) p.172.
[最終更新 2023/11/12]