ターナ文字 英 Thāna script
モルディブ共和国の公用語ディヴェヒ語を表記する文字。ディヴェヒ(Dhivehi)文字ともいう。モルディブ固有の文字として 12 世紀の銅板文書に用いられているエヴェラ文字は,古代シンハラ文字に近い。16 世紀には,それに改良を加えたディヴェ文字が公文書に使用さた。18 世紀末から,現行の,アラビア文字を基礎にしたターナ文字が公文書に採用されうようになる。 [1]
ターナ文字は,左から右へ書くディヴェ文字とは逆に。右から左へ書く正書法である。これは,アラビア語からの借用語を多く使う必要から,書記方向が切り替えられたものである。ターナ文字は,1から9までのアラビア語数字と,1から9までのインド数字からなり,この順で配列される。 [2]
文字構成
多くのインドやスリランカの諸言語とは異なり,f や z の字母が存在するのは,アラビア語の影響である。他方,t,d,l などに2種類の音と字母があるのは,インドの諸言語の影響であると見られている。
文中の母音を示すには,インド系文字と同じく母音記号を子音の上または下に付加する。また次のように,ゼロ子音字の役割をする文字アリフ(上記文字表8番目)に母音記号を付加すると,母音のみを表す。
アラビア語を翻字する際に用いられる補足的な字母(ティキ・ジェヘー・ターナ)
ディヴェヒ語テキスト
サンプルテキスト [3]
文字入力
文字コード
ターナ文字のユニコードでの位置は U+0780..U+07BF である。対応フォント:Noto Sans Thaanaなど。
入力方法
ディヴェヒ語用キーボードを設定すると,タスクバーにはISO言語コードISO 639-1の言語コードでディヴェヒ語を表す「DI」が表示される。 【参考】 多言語環境の設定注
- ^ 中村尚司 (2001)「ターナ文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p.580.
- ^ 上から,1 行目はアラビア数字(算用数字),2 行目はアラビア語の数字,3 行目はペルシア語やウルドゥー語の数字,4 行目はインド系文字のデーヴァナーガリー文字の数字,5 行目と 6 行目はターナ文字の最初の 18 文字。
- ^ Gair, James W. & Bruce D. Cain, 熊切拓訳 (2013)「ディヴェヒ文字」Peter T.Daniels, William Bright [編], 矢島文夫 総監訳, 石井米雄, 植田覺, 佐藤純一, 西江雅之 監訳『世界の文字大事典』朝倉書店, p. 597.
関連リンク・参考文献
- ターナ文字 | ディベヒ語
- 中西コレクションターナ文字【参照】中西亮 (1994)「インド洋のマルディブ文字」『文字に魅せられて』同朋舎出版, pp. 67-70.
- Omniglot Thaana script
- WAZU JAPAN's Gallery of Unicode Fonts: Thaana
- Maldives: How to write the Dhivehi Alphabet in the Thaana Script
[最終更新 2021/04/10]