パルティア文字 英Parthian script

パルティア文字は,イラン系の中世語であるパルティア語を表記する文字である。パルティアはカスピ海の南東部の地域の名称である。そこで話されていた言語であるパルティア語は,西暦紀元前 250 年頃~後 224 年にパルティア朝(アルサケス朝とも呼ばれる)がイランを支配すると,支配者の言語として重要な役割を果たした。
パルティア文字の系統は明らかである。アケメネス朝ペルシア時代に,公用語としてアラム語が採用され,帝国の各地で文書行政の言語として用いられていた。アケメネス朝の崩壊後もアラム語は使用されたが,のちにアラム語それ自体は忘れられ,アラム文字を使って各地の言語が表記されるようになった。同時に,書体も各地で独自の発展をした。したがって,パルティア文字とは,パルティア地方で土着の言語を表記するために使われ,独特の書体に変化したアラム文字のことである。同じ経緯で成立したイラン系の言語を表記する文字には,パフラヴィ文字,ソグド文字,コレズム文字がある。なお,アヴェスタ文字は,パフラヴィ文字をもとに人為的に考案された文字である。 [1]
文字構成
次は,パルティア文字の表である。基となるアラム文字を,二行目に青字で示した。

パルティア語テキスト
サンプルテキスト
紀元 53 年に羊皮紙に罹れたパルティア語文書。クルディスタンのアヴロマン出土。→ ヨセフ・ナヴェー

パルティア語例文



出典:Daniels [2]
文字入力
文字コード
パルティア文字のユニコードでの収録位置は U+10B40..U+10B5F である。

文字表示テスト
パルティア文字フォント Noto Sans Inscriptional Parthian などがインストールされていれば,下表右下セルにパルティア文字が表示される。
正しい表示 | お使いのコンピュータでは |
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入力方法
パルティア語(文字)を入力するためのツールは存在しない。【参考】 多言語環境の設定
関連リンク・参考文献
Parthian language
- Omniglot: Parthian script | Middle Persian scripts
注
- ^ 吉田豊(2001)「パルティア文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- ^ Daniels, Peter T.,熊切拓訳「イラン諸語のためのアラム文字体系」,Peter T.Daniels, William Bright [編] ; 矢島文夫 総監訳 (2013)『世界の文字大事典』(朝倉書店)
- ヨセフ・ナヴェー 著 ; 津村俊夫, 竹内茂夫, 稲垣緋紗子 訳(2000)『初期アルファベットの歴史』(法政大学出版局)
[最終更新 2018/10/20]