オリヤー文字 英 Oriya script
オリヤー文字は,インドの東部にあるオリッサ州の大多数の住民によって用いられている音節文字である。西暦紀元前約 7 世紀に成立したと思われるブラーフミー文字は,西暦 4~6 世紀にグプタ文字へと変化し,さらにそれから派生したナーガリー文字が 7~9 世紀に北インド一帯で使われた。また,そのナーガリー文字が 11 世紀頃,東インド地方に伝わっていって独自の発達をとげたのが,古代ベンガル文字や初期ネパール文字,ネワール文字などである。現代のオリヤー文字は,古代ベンガル文字から派生したものと考えられている。 [1]
現存するオリヤー文字の最古の例は 14 世紀の碑文に見られるが,その形に関してはドラヴィダ系文字の影響を強く受けており,ベンガル文字やアッサム文字などとはかなり異なって,ほとんどの字が上半に円形を持ち込むためにこの文字群は坊主頭が並んでいるような奇観を呈するが,デーヴァナーガリー文字の上の横棒が変形したものと考えれば納得がゆく。[2]
文字構成
音節は,母音字母・記号,子音字母および記号から構成される。
gu-pta patha (秘密の道) の構成要素 | ||||||
ଗ | ୁ | ବ | ୍ | ତ | ପ | ଥ |
U+0B17 | U+0B41 | U+0B2C | U+0B4D | U+0B24 | U+0B2A | U+0B25 |
GA | U | BA | VIRAMA | TA | PA | THA |
単独母音文字・母音付加記号
伝統的には 12 の単独母音文字があるが,現代語では, ṝ (U+1E5D)を表す文字はほとんど用いられない。 a は単独子音文字そのものに含まれているとして,特別の付加記号はもたない。
子音文字
単独子音文字
子音文字+母音付加記号
他のインド系文字と同様に,オリヤー文字の子音文字も,そのままでは a 音を伴う音節を表示する。子音を単独で表示するときは,右上にヴィラーマ(U+0B4D)を付加する。
「子音文字+子音付加記号」の子音結合文字
連続する子音を表記するときは,初頭の子音を通常の大きさと位置で表記し,後続の子音をその下方に上部半円形の部分を削除し小型化した形で付加する。ただし,子音字によっては特殊な子音記号形になる。
数字文字
テキスト
サンプルテキスト
《訳》 生き物の無限の苦難を見て誰がいったい耐えられよう?私の命がたとえ地獄に落ちようとも世界は救われてほしい。 [3] |
テキスト入力
ユニコード
オリヤー文字のユニコードでの収録位置は U+0B00..U+0B70 である。注
- ^ 奈良毅 (2001)「オリヤー文字文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 203.
- ^ 中西亮 (1975)『世界の文字』松香堂
- ^ Bagchi, Tista.,家本太朗・内田紀彦訳 (2013)「オリヤ文字」Peter T.Daniels, William Bright [編], 矢島文夫 総監訳, 石井米雄, 植田覺, 佐藤純一, 西江雅之 監訳『世界の文字大事典』朝倉書店, p. 426.
関連リンク・参考文献
- オリヤー文字
- 中西コレクション(国立民族学博物館)オリヤ文字
- Omniglot Odia
- ScriptSorce Oriya
- Learn to write Oriya
- 町田和彦編 (2011)『世界の文字を楽しむ小事典』大修館書店, この文字の特徴は伝統的に貝多羅(バイタラ,サンスクリット語の「葉」を意味するパットラの漢字音写)と呼ばれる書写材料に書かれたことに起因する。貝多羅とは,ヤシ科のパルミラヤシの葉を乾燥させて長方形に切りそろえたものに,鉄や竹などの硬質の筆先で文字を書き込み,刻面に墨を塗り込んで文字を浮き立たせたもの。水平線を刻むことで葉の刻面が破れることを避けるために丸みを帯びた字形が生じたと考えられる。p. 220.
- 山部順治 (2001)「オリヤー文字」町田和彦編『華麗なるインド系文字』白水社, pp. 178-179.