グルジア(ジョージア)文字 英 Georgian alphabet
グルジア語は南カフカース地方に位置するジョージアの公用語で,コーカサス諸語を代表するもっとも有力な言語である。グルジア語は,メグレル語,ラズ語,および,スバン語とともに南カフカース諸語(あるいはカルトゥベリ諸語)を形成する。
グルジア語はカフカース諸語の中でただ一つ非常に古くから文献を有する言語で,現存するグルジア文字による最古の文献は,ベツレヘム近郊にあるグルジア教会跡から 1950 年代初めに発見された, 430 年頃の碑文である。 グルジア文字の創作者としては,2 人の歴史上の人物の名が伝承されている。一人はグルジアの王パルナヴァズ(parnavaz)で,もう一人は,アルメニア文字を作成したといわれるアルメニアの修道僧メスロプ・マシュトツ(Mesrop Mashtos)である。文字考案者が誰であるかは別として,グルジア文字は, 337 年頃にジョージアの国教として受容したキリスト教を布教するために,ギリシア文字をモデルにして 4~5 世紀頃作られたものと考えられる。[1]
字形の変遷
グルジア文字は,その歴史において「アソムタヴルリ文字」,「ヌスフリ文字」および「ムヘドゥルリ文字」という 3 種の文字が区分される。[2]
アソムタヴルリ文字
「アソムタヴルリ文字」(Asomtavruli 大文字) もしくは「ムルグロヴァニ文字」(Mrglovani 丸文字) と呼ばれ,少なくとも 5 世紀には成立していた最も古いグルジア文字の形態である。文字の高さがすべて同じであること,そして,直線と円弧の組み合わせで描かれていることがその特徴としてあげられる。
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ヌスフリ文字
9 世紀になると「ヌスフリ文字」(Nuscuri 書写文字) または「ヌスハ・フツリ文字」(Nusxa-xucuri) ないしは「クトホヴァニ文字」(Ḳutxovani 角文字) と呼ばれる文字が現れた。文字の高さは一様ではなく,やや時代を下った後には,草書体のような特徴を呈するようにもなった。
ヌスフリ文字で書かれた Mikael Modrekili による手稿 (10 世紀) [Mikael Modrekili / Public Domain / 出典] |
上記 2 種類の文字をあわせて「フツリ文字」(Xucuri 僧侶文字) と呼ばれ,現在ではジョージア正教会の公式文字として,教会関係のみで用いられる。
ムヘドゥルリ文字
その後現れる現代グルジア語の新しい文字が「ムヘドゥルリ文字」(Mxedruli 騎士文字) である。この文字による最初の文献は 11 世紀に書かれたが,当初,この文字の使用は世俗的な書き物に限定されていたが,やがて宗教関係の文書でも用いられるようになる。17 世紀には印刷術の導入に伴って定着し,現代の標準字体となった。
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現代グルジア文字構成
現代語では,ムヘドゥルリ文字が用いられ,下記表中青色で示した文字を除いた 33 文字からなり,母音字が 5 字,子音字が 28 文字である。大文字と小文字の区別はない。現代グルジア文字は,徹底的にアルファベットの方式を守り,1 音 1 文字に対応していて,正書法の立場から非常によくできている。左から右方向に横書きされ,分かち書きされる。語を強調する際には,文字と文字とを少し離して書くことがある。 [3]
また,すべての文字の高さを揃えた字形があり,表題・見出し・広告・看板などで用いられている。
グルジア語テキスト
世界人権宣言第一条 [// Universal Declaration of Human Rights - Georgian] |
ローマ字翻字:transliteration
Q'vela adamiani ibadeba tavisupali da tanasts'ori tavisi ghirsebita da uplebebit. Mat minich'ebuli akvt goneba da sindisi da ertmanetis mimart unda iktseodnen dzmobis sulisk'vetebit.
ユニコード
グルジア文字のユニコードでの収録位置は U+10A0..U+10FF である。その中で,ムヘドゥルリ文字は U+10D0..U+10FF に,アソムタヴルリ文字は U+10A0..U+10CF に収録されている。また,グルジア語補助領域 U+2D00..U+2D2F にはヌスフリ文字が配置される。
グルジア文字入力方法
グルジア語用スクリーンキーボードをデスクトップに表示して,画像の配列を参照しながら,キーボードから文章を入力する。タスクバーには,グルジア語を表す「KA」が表示される。これは ISO 639-1 の言語コードで,グルジア語 ქართული ენა(kartuli ena)に因る。【参考】 多言語環境の設定
注
- ^ 岸田泰浩 (2001)「グルジア文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 378-379.
- ^ 岸田 p. 378.
- ^ 岸田 p. 381.
関連リンク・書籍
- 地球ことば村「世界言語博物館」「グルジア語」
- ქართული დამწერლობა Georgian alphabet | グルジア文字
- 中西コレクション(国立民族学博物館)グルジア文字
- Omniglot: Georgian (ქართული ენა)
- Convent of Noster: The Lord's Prayer
- グルジア語新聞・放送 რადიო თავისუფლება radiotavisupleba.ge
- コーカサスの言語地図 Ethnic Groups In Caucasus Region