ポラード文字 英 Pollard script
ミャオ語は中国,貴州省を中心に,広西壮族自治区,湖南省,四川省,雲南省などの中国南部,および,インドシナ半島のヴェトナム,ラオス,タイの 3 か国に分布する少数民族言語。苗族は,民族固有の文字を創作したことがなかった。若干の変形漢字を作ったものの,ずっと無文字で生活していた。そして,契約,記事,通信には,漢字を使い,漢文を書いていた。20 世紀になって,イギリスの宣教師が作ったポラード文字が流通し,続いて,1956 年以降になってラテン文字による表記方案が設定された。 [1]
ポラード文字(滇東北老苗文)
1904 年,英国の宣教師サミュエル・ポラード(Samuel Pollard, 1864~1915)が中国貴州省威寧県石門坎地区に赴き伝道活動をしたが,聖書を当地の苗語に翻訳するため,苗族の協力を得て考案した文字が,ポラード文字/滇東北老苗文である。この文字は貴州省の威寧(いねい),赫章(かくしょう),水城(すいじょう)などの諸県のみではなく,雲南省東北の彝良(いりょう),大関,永善などの彝族自治県においても,約5万人のキリスト教徒の間で,現在もなお使われている。
基本字形は,大文字と呼ぶ子音字と小文字と呼ぶ母音字からなる音素文字である。小文字は大文字の4分の1の大きさをもち,子音字に母音字を添えて,音節ごとに左から右に横書きする。声調を表記するために,小さい母音字を子音字の上方,右上角,右脇,右下角の4つの位置のいずれかに置く。子音字は初め29字であったが,後に [ɣ],[ʔ],[w] の3字が補われた。
子音字
母音字
声調表 [2]
ポラード文字テキスト
サンプルテキスト
テキスト: Mt 6. 9-13. [3]
ユニコード
ポラード文字は,ユニコード領域 U+16F00 - U+16F9F に収録される。ユニコードフォントには MiaoUnicode-Regular.ttfが利用できる。
滇東北苗文
ポラード文字はあまり効率のよい文字ではないので,1956 年以来,滇東北苗文と呼ばれるラテン文字を主体とする音素文字が設定 [4] され,この文字と並用されている。その新しい文字でもポラード文字と同じ原則が採用された。たとえば,b- は p-, b-, bɦ- の3つの価値をもち,陰調(1・3・5・7 声)では「p-」,陽調の6声では [b-],2・4・8 声では[bɦ-]と読むようになっている。
関連リンク
- Pollard script | ポラード文字
- Omniglot
- Songs and Stories and a Glossary of Phrases of the Hua Miao of South West China Writing Miao text and the Ahmao font
注
- ^ 西田龍雄 (2001)「ポラード文字」『世界文字辞典』 (言語学大辞典,別巻,三省堂)
- ^王德光(1992)「滇东北老苗文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)
- ^ Hwa Miao New Testament. British and Foreign Bible Society, Shanghai, 1929. (所蔵:聖書図書館)
- ^王德光(1992)「滇东北苗文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)