ンコ文字 英 N'Ko
主に西アフリカのギニア,マリ,コートジボワールなどで話されるマンデ諸語(正確な話者人口は不明,系統はニジェール・コンゴ語族に属するとする説が有力)を表記する文字。「N'Ko ンコ」はマンデ諸語で共通して「私は言う」の意味。1949 年にギニアの作家ソラマナ・カンテ(Solomana Kante,1922~1987)がマンデ諸語のマニンカ語表記のために考案した文字。文字創造の動機は,固有の文字をもたないアフリカを文化的に劣っているとする外国人の偏見に接したことだとされる。この文字が完成したと伝えられる 4 月 14 日は,この文字の記念日となっている。ヴァイ文字と並んでこの文字は,アフリカ人が自分たちの言語のために考案した文字の中で,普及・使用に比較的成功している文字と言える。 [1]
文字構成
ンコ文字は,基本的には子音を表す 18 の文字と母音を表す 7 つの文字から成る表音文字。母音の上に付加される補助記号は声調を表し,下に付加される補助記号は鼻母音化を表す。書記方向は,アラビア文字と同じく右から左に進む。
Vowels and consonants
Extra letters for loanwords from European languages and Arabic
Numerals
ンコ文字の普及
この文字は,西アフリカのマンデ諸語―マンディンカ語, ジュラ語, バンバラ語―に徐々に普及していった。コーランの翻訳 [2],各種教科書,地方新聞などにも使用されている。マンディンカ語にはラテン文字およびアラビア文字による表記が広く使われており,前者が正式な綴り字だが,後者のほうが古くからあり,より広く使用される。それに加えてンコ文字も使われる。
ラテン文字
アラビア文字
N'ko 版 Wikipedia
ユニコード
ンコ文字のユニコードでの収録位置は U+07C0..U+07FF である。
入力方法
ンコ文字は,アラビア文字と同様に,単語中の文字が一筆書きのように連なって表記される。この特徴を実装するフォントは,上掲の kanjamadi フォントと,Conakry フォントである。
上記以外のフォント,Noto Sans Nko, Ebrima(Windows) を用いた場合には,下記のように単語中の文字は連続せず離れ離れに出力される。
ンコ文字用仮想キーボードには,Windows 用のKeyman と,Mac OS X 用の Conakry font+keyboard が存在する。
母音の脱落
マニンカ語の正書法には独特な表記法があり,繰り返される同一の母音はしばしば省略される。同じ母音とアクセントが 2 つの異なった子音に後続する場合,最初の母音は省かれる:arm, bolo 。しかし,同じ子音に後続する際は両方の母音を記す:mama 。同一の母音が数回繰り返される多音節の単語では,最初の母音 2 つが結合する。3 音節の単語 hyena, suluku は となる。
注
- ^ 「ンコ文字」町田和彦編 (2011)『世界の文字を楽しむ小事典』大修館書店, p. 259.
- ^ Translation of the Meaning of the Holy Quran in N'Ko (Bambara) Language (30.60 MB)
関連リンク
- ンコ文字
- Omniglot: N'Ko
- N'Ko Institute of America
- Diane, Baba Mamadi (2011) Indigenous African anthropology of briefs.