ソヨンボ文字 英 Soyombo script
内モンゴルがシナからの独立を宣言した1911 年以後のもので非常に新しいが,ソヨンボ・ウィグル・パスパの三体文字によるボグドカーン御璽である。
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サンスクリット語 svayambhu (自在)の転訛。チベット語の呼称 rang-byung snang-ba も同義。初代のクーロンの活仏オンドゥル・ゲゲン(Öndür gegen 1635~1723)が,インド系のランジャナ文字を母体として 1686 年に考案した文字である。16 世紀後半以降のチベット仏教の再導入に伴い,モンゴルでは仏典の正確な翻訳やサンスクリット語音,チベット語音の正確な再現が急務とされた。その要請に応えるため,モンゴル語だけでなく,サンスクリット語やチベット語も表記できるよう工夫されている。[樋口 p. 556]
この文字は,インドのデーヴァナーガリー文字に直接の範をとっており,四角い感じから,モンゴル人は kebtege dörbeljin üsüg すなわち,「水平の方形文字」と呼んだ。「水平の」というのは,同じ「方形文字」であるパスパ文字が縦書きであるのに対比させた呼びかたである。
様々な形式の異言語を正確に再現するための工夫の一方,各々の言語を表記するには不要な要素が多く,また,筆画も多い,という実用面の配慮に欠けていた。モンゴル語に関しては蒙古文字よりはるかに正確な表記が可能であるにもかかわらず,まったくと評してよいほど普及しなかった。 [1]
右図はモンゴル国旗で,左側にはソヨンボと呼ばれるモンゴル国のシンボルマークが使用されている。これは文章の開始を示す記号(冠頭記号)としても使われている。
ウランバートルの政府宮殿門に描かれたソヨンポシンボル [Chinneeb / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
文字構成
モンゴル語の音節は,子音 (Cb),母音 (V),長母音記号 (L),二重母音 (Vd),および末尾子音 (Cf) の要素から成る。サンスクリット語には,アヌスヴァーラ (Sa) とヴィサルガ (Sv) 母音 ṛ、ḷ が,チベット語の音節には、前置字 (Cp),上接字・下接字・後置字・再後置字接 (C2 … Cn),ツェク (T) の要素が含まれる。[Tasnu Arakun / Public Domain /出典]
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母音記号の配置位置
この文字は,サンスクリット語やチベット語も表記しようとするため,たとえば同一の字母であっても,モンゴル語としては d,サンスクリット・チベット語としては t の転写に使用されるといった事態が生じうる。したがって,機械的にローマ字に置換する翻字と個々の言語の音韻体系を考慮した転写とを区別する必要がある。[樋口 p. 557]
母音字母
g + 母音
子音字母
次の子音字母の中,モンゴル語の表記に必要なものを青字で示す。他はサンスクリット語,チベット語表記専用の字母である。子音字は単独で使用された場合はには,必ず a を伴う アブギダ 系の文字である。
末尾子音字母
ソヨンボテキスト
サンプルテキスト [2]
テキスト入力
ユニコード文字コード
ソヨンボ文字は,ユニコード U+11A50..U+11AAF の領域にに配置される。対応フォント:Noto Sans Soyombo, GNU Unifont Glyphs
注
- ^ 樋口康一 (2001)「ソヨンボ文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂
- ^ Poem for the Green Tara typeset in a digitized Soyombo font
関連リンク・参考文献
- 地球ことば村「ことば村・ことばのサロン」 「モンゴルの言語と文字の歴史」
- ソヨンボ文字 | Soyombo alphabet | Soyombo symbol
- Omniglot: Soyombo script
- 中野美代子 (1994)『砂漠に埋もれた文字:パスパ文字のはなし』筑摩書房.
- Соёмбын нууц ба синергетик. Эмхэтгэсэн Б. Болдсайхан, Б. Батсанаа, Ц. Оюунцэцэг. Улаанбаатар 2005. (Secret of Soyombo & synergetic)