シャーラダー文字 Śāradā 英 Sarada

インド北西部のカシュミール(Kashmir)において,カシュミール語(Kashmīrī)を表記するのに用いられる。成立したのは8世紀頃とされ,当時,ガンジス中流域,東インド,西北インド,カシュミールに普及していたシッダマートリカー文字の西部派から成立した。カシュミールのカルコータナ(Karkoṭaka)王朝は3世紀以上にわたってこの地方を支配し,その勢力に伴って,シャーラダー文字はカシュミールからパンジャーブ,西インド,北インドにかけて普及した。
シャーラダーという名称は,カシュミールで信仰されていた女神シャーラーダー・デーヴィー(Śāradā Devī)による。シャーラダーとはシヴァ神の妃パーラヴァティーのことで,カシュミールの住民は,シャクティ(Śakti)女神の信奉者(śākta)であったことから,この名称がついた。
現在では,カシュミールの住民の大半はイスラム教徒であり,彼らはペルシア文字でカシュミール語を表記する。また,ヒンドゥー教徒のほとんどはデーヴァナーガリー文字を使用するので,今でもシャーラダー文字を使う人は非常に少ない。 [1]
文字構成
シャーラダー文字は,これから派生したインド西北部の様々な文字を生み出した点でより重要である。ビューラー(Bühler)は,シャーラダー文字からタークリー(Takrī)文字とランダー(Laṇḍā)文字が生まれたとする。4つの母音字と 31 の子音字からなる。現行デーヴァナーガリー文字とも多少類似点をもつが,現行グルムキー(Gurmukhī)文字との共通性の方が多い。反転音 [ɽ] を表す文字はない。以下の文字表では,1:シャーラダー文字,2:デーヴァナーガリー文字,3:グルムキー文字を表す。
子音字
母音字・子音字+母音字
数字
テキスト
サンプルテキスト
樹皮に書かれたバラモン教パイッパラーダ派のアダルヴァ・ヴェーダ手稿。サンスクリット語シャーラダー文字。Atharvaveda

テキスト入力
文字コード
本項で使用したフォント Sharda では,シャーラダー文字が,ユニコードの Basic Latin U+0020 .. U+007F の範囲内に配置さている。なお,次期ユニコード拡張に向けてシャーラダー文字コード案が提出されている。
文字表示テスト
Sharda フォントがインストールされていれば,下表右下セルにシャーラダー文字が表示される。
正しい表示 | お使いのコンピュータでは |
![]() | Sharada |
入力方法
仮想キーボードを利用する際は,英語キーボードを選択し,それにシャーラダー文字フォントを割り当てる。単語・短文を引用するような場合は 多言語環境の設定 を参照。関連リンク・参考文献
Sharada script
- Omniglot: Sharda alphabet
- KOA HOME: Language section
注
- ^ 溝上富夫(2001)「シャーラダー文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)