ランダー文字 Laṇḍā,英 Landa

ランダー文字は,インド西北部,パンジャーブ(Pañjāb)地方とシンド(Sindh)地方で,一部の商人によって使われる文字。成立は古く,シャーラダー文字から生まれ,タークリー文字ときわめてよく似ている。ランダーとは,「刈り取られた」という意味で,その名の示す通り,きわめて解読困難な文字である。不完全さの最大の理由は,母音を表記しないことである。(→ 溝上)
シク(Sikh)教の教祖(グル)たちはこの文字で神への賛歌集を書いたが,非常に不完全な文字で読みにくかったので,第 2 代目の教祖グル・アンガド(Guru Aṅgad)が,デーヴァナーガリー文字の母音記号等を参考にしながら改良して作ったとされるのが,現行パンジャープ(インド)州で公式に用いられるグルムキー文字とされる。つまり,グルムキー文字の初期の形態という意味で,ランダー文字は歴史的に重要な文字である(下記〈表〉参照)。
この文字が最も普及したのは商人の間で,帳簿をつけたりするのに,現在でも用いられる。これはその難解さを利用して,人に読まれないように,とくに所得税の査定にあたって徴税吏の目をごまかす意図で用いられはじめたと思われる。したがって,このランダー文字は「商人文字」と俗称されることがある。シンド州は現在,すべてパキスタン領に入ったので,シンディー語(Sindhī)の表記には,ペルシア文字が用いられる。
ランダー文字表


ランダー文字見本

関連リンク
Laṇḍā scripts
- AncientScript.com Landa
注
- 溝上富夫(2001)「ランダー文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
[最終更新 2019/01/20]