リュキア文字 英 Lycian alphabet
紀元前 1 千年紀に小アジア西南部のリュキアで用いられていたアルファベット系の文字。現存する資料の大部分は,岩や石棺に刻まれた墓碑銘で,その所属年代は大体前 5~前 4 世紀である。この文字で記されたリュキア語は,古代小アジアの謎の言語として 19 世紀以来多くの学者がその解読に取り組んできたが,20 世紀半ば以降,印欧アナトリア語派の 1 つルウィー語と関連付けられることによって,急速に解明が進んだ。[松本]
リュキア文字の直接の手本となったのは,おそらく西ギリシア型の文字(Western Greek alphabet)であり,また,字形その他から見て,成立した時期は,他の小アジア系アルファベットよりもおそらく新しいであろう。
文字構成
リュキア文字は全部で 29 の文字からなり,各々の文字の字体やその使用法は,他の小アジアの文字体系に比べて,きわめて統一的で,時代や地域による相違はあまり認められない。リュキア文字の配列に見るように,29 種のうち 17 種の文字は,ギリシア文字とほとんど同形か,あるいはその変形で,音価もギリシア文字のそれとほぼ同じと見られる。残りの 12 文字は,リュキア語の表記のためには不要なギリシア文字を,自国語の固有の音の表記に転用するなど,何らかの改変ないし創造を加えたものである。
リュキア文字例
サンプルテキスト
サンティアン・オベリスクに記された碑文の一部 [Nikolas lloyd / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
リュキア文字で書かれたピクソダロスの勅令 [BabelStone / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
テキスト入力
ユニコード
ユニコードのリュキア文字の範囲は U+10280..U+1029F である。対応するフォントは, Noto Sans Lzcian などがある。
注
- 松本克己 (2001)「リュキア文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 1126.
参考サイト
[最終更新 2022/03/17]