古代ペルシア楔形文字 英 Old Persian cuneiform
アケメネス朝ペルシア(前 6 ~前 4 世紀)の宮廷言語,古代ペルシア語を記録するのに用いられたので,古代ペルシア文字と称している。アケメネス朝ペルシア文字,ペルシア楔形文字ともいう。
古代ペルシア文字は,シュメールに始まるメソポタミアの長大な楔形文字史の最後を飾るものであり,文字体系として進化した段階を示している。ここでは,先行する他の楔形文字にあるような同音異字性,一字多音性,表音文字と表意文字の共存は原則的に見られない。書き順は,先行する楔形文字と同様に横書きで,左より右に進む。
古代ペルシア文字は,行政記録などの実用に供されることなく,その使用例が事実上国王の碑文に限定されていた点で,他の楔形文字とは性質を異にする。さらに特異なことは,それが自然発生的に徐々に発達してきたものではなく,ある時期に明確な意図をもって創出されたものであるという点である。全 36 文字中最も単純なのは,2 要素からなる〈ku〉である。同様に,〈ru〉も 3 字画からなる簡単な字形をしている。この 2 文字の組み合わせ〈ku-ru〉は,アケメネス朝の創始者キュロスの名前を示している。〈ku〉と〈ru〉の 2 音節は,古代ペルシア語ではそれほで使用頻度の高いものではない。しかも,必要度の高い文字〈ti〉が見当たらないなど,文字の構成が恣意的なことから,特定の固有名詞キュロスを刻字するために,まず古代ペルシア文字を創出したとの仮説も説明できるとされる。 [1]
文字構成
古代ペルシア文字は,1)音節文字,2)表意語詞,3)数詞,4)語詞間識別記号 の 4 種類に分類される。
文字と音価
Free Font: Code2001
音節文字
音節文字中最多の〈Ca〉型は,子音のみを示すこともある。したがって,〈ba〉= /ba/~/b/(以下同様)と理解する必要がある。
字形からみた文字表
Free Font: MPH 2B Damase
数詞
Free Font: ALPHABETUM Unicode font
表意語詞
表意語詞 8 個は,いずれも碑文中で使用頻度の高いものに限定され,イデオグラム(表意語詞)というよりも,実際には省略記号といえる。
Free Font: FreeSans
テキスト
古代ペルシア語文例
古代ペルシア語碑文 [CC BY 2.5 / 出典] |
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ユニコード
古代ペルシア文字のユニコードでの収録位置は U+103A0..U+103DF である。
注
- ^ 上岡弘二/縄田鉄男 (2001)「古代ペルシア楔形文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 421.
関連リンク・参考文献
- Old Persian cuneiform | 楔形文字
- Omniglot: Old Persian Cuneiform
- モーリス・ポープ [著] ; 唐須教光 訳 (1995)『古代文字の世界』講談社学術文庫.