パルミラ文字 英 Palmyrene script
現在のシリア国のほぼ中央部に位置するパルミラ遺跡およびその他各地から出土した,前 1~ 後 3 世紀のパルミラ語碑文の文字。パルミラ語が北西セム語に属するアラム語の 1 方言であることに対応して,パルミラ文字はフェニキア文字の変化したアラム文字の 1 変種であって,方形ヘブライ文字,ナバテア文字とほぼ同時期に公用アラム文字を母体として生まれた,と推定される。[松田 p. 758]
文字構成
体系としては,アラム文字と 1 対 1 に対応する 22 個の子音文字からなり,字母名称は直接には知られないから,アラム文字などと同じくヘブライ文字の名称を借りて呼ばれる。[Everson]
パルミラ文字テキスト
装飾書体と草書体とに分けられ,前者は碑文の多くに見られ,方形ヘブライ文字によく似た印象を与えるが,ヘブライ文字が直線的であるのに対し,パルミラ文字は内側に湾曲した曲線の組み合わせで,そのため角が出張っており,かつ,' w k m s t の各字母においてとくに,書き始めないし書き終わりの部分に渦巻状の装飾的要素が見られる点が,きわめて特徴的である。一方,いわゆる草書体は,装飾的要素が少なく,ヘブライ文字よりもシリア文字(エストランゲロ体)に近い。そして,1 字母をできるだけ 1 画で書こうという傾向が顕著である。[松田 p. 759]
サンプルテキスト
2世紀から3世紀までのパルミラの石灰岩スラブ [Zytheme / CC0 / 出典] |
パルミラ帝国の碑文が刻まれた葬式の石碑 [Unknown / Public Domain / 出典] |
パルミラ文字ユニコード
パルミラ文字のユニコードでの収録位置は U+10860..U+1087F である。なお,現在のところ,ユニコード対応のフォントは存在しない。[Everson]
注
- 松田伊作 (2001)「パルミラ文字」河野六郎 [ほか] 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂.
- Everson, Michael (2010) Proposal for encoding the Palmyrene script in the SMP of the UCS
関連リンク・参考文献
- Palmyrene alphabet | Palmyra
- 世界の文字(中西印刷)パルミラ文字
- ScriptSource Palmyrene
[最終更新 2022/03/21]