チャム文字 英 Cham script
インドシナ半島のオーストロネシア語族チャム語を書き記すための固有の音節文字で,南インドのパッラヴァ(Pallava)文字の系統を引く。最古の碑文は,ベトナムのフーイェン(Phú Yên)地方で発見された 4 世紀後半のバドラヴァルマン王のチョディン(Cho-dinh)・サンスクリット語岩板碑文で,文字は,初期パッラヴァ文字に属す。 [1]
チャム族によるチャンバ(占城)王国は,西暦 2 世紀末インドネシア半島に建てられた林邑王国に始まり,17 世紀には,北方からの越人の南進によって完全に滅びた。しかし,その末裔は,現在,カンボジアに 10 万人,ベトナムに 5 万人が散在して生存し,少数民族語ではあるが,チャム語とともにチャム文字の使用も行われている。カンボジアで使用される文字は akhar srah,ベトナムで使用される文字は akhar thrah (ともに「常用文字」の意味)と呼ばれ,文字数は後者のほうが多い。akhar thrah は曲線的に,akhar srah は字画を残して分解的にかかれるのが特徴である。
A Champa manuscript recounting the social culture of the Cham community of the early 18th century [Gryffindor / CC BY 3.0 / 出典] |
文字構成
インド系文字としての特徴を持ち,各文字には基本母音として a が含まれる。ただし,鼻音系列文字は,ə という音価をもち,補助記号によって音価 a を表す。文字は,母音字・母音記号・子音字,および数字からなる。チャム語の音節は CV(C) で表され,音韻末には音韻末子音字が用いられる。
urang crih (見かけない人) の構成要素 | |||||||
ꨂ | ꨣ | | ꩍ | ||||
U+AA02 | U+AA23 | U+AA43 | U+AA0C | U+AA34 | U+AA2A | U+AA4D | |
U | RA | F-NG | CHA | RA | I | F-H |
ベトナム(東)・チャム文字
母音字 |
母音記号 |
子音字 |
音韻末子音字 |
数字 |
チャム文字文例
創世記 1:1 [Brŭk ngăk graup seh pô êtha. (Bible. N.T. Acts. Cham. Vietnam, 1977)] |
カンボジア(西)・チャム文字
母音字 |
母音記号 |
子音字 |
音韻末子音字 |
数字 |
テキスト入出力
チャム文字コード
チャム文字のユニコードでの収録位置は U+AA00..U+AA5F である。
ベトナム・チャム 《使用フォント》ユニコード:Noto Sans Cham
カンボジア・チャム 《使用フォント》ユニコード:CJM Kh 001
注
- ^ 崎山理 (2001)「チャム文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 603-605.
関連リンク・参考文献
- Cham script
- 中西コレクション(国立民族学博物館)チャム文字
- 世界の文字(中西印刷)チャム文字
- Omniglot Cham
- ScriptSource Cham
[最終更新 2023/11/13]