ウズベク語の文字 英 Writing system for Uzbek

ウズベク語は,トルコ系言語の一つであるチャガタイ語群に属する言語である。ウズベク語の話者人口は 2,000 万人を超えるとも言われており,言語話者の 3 分の 2 がウズベキスタンを中心に分布している。他に,アフガニスタン,タジキスタン,カザフスタン,トルクメニスタン,キルギス,ロシア,さらに中国の新疆ウイグル自治区東部でも用いられている。現在,標準ウズベク語といわれる言語は,タシュケント(Tashkent)の方言をさし,文語もこれに基づいて作られている。 [1]
ウズベク語の文字改革
アラビア文字 (― 1930)
ロシア革命後,新教育体制のもとに,チャガタイ文語の文字であったアラビア文字の改革が進められ, 1923 年には,イラン語方言の 6 母音をもった新しいアラビア文字の正書法(改良アラビア文字正書法)が導入された。主要な改革は,1)子音と母音を別々に表記し,各一音に一字を充てる,2)子音の数は 23,母音の数は 6 とする,3)アラビア語の語中における文字バリエーションを除去し,文字の形は一つにする,4)アラビア語の単語に新しい正書法によって母音を導入する,というものであった。 [2] 以下に示すアラビア文字表,ラテン文字表,キリル文字表は Eesti Keele Instituut [3] による。
A 1923 年廃止,B 1923 年導入,C 1865 年導入
サンプルテキスト
出典:Nida (1972) [4]
ラテン文字 (1930 ― 1940)
アラビア文字の改革が進んでいるころ,全連邦的にラテン文字の導入という動があり,1926 年のバクーの会議でテュルク民族の文字にラテン文字の導入をするというのが圧倒的多数で可決された。ウズベキスタンでも同年にラテン文字導入が承認された。1929 年には,そのラテン文字を用いた文語の基礎言語としてキプチャク・ウズベク方言が選択された。この結果,6 母音は 9 母音に入れ替えられた。母音調和はこの段階では公的に認められて表記は承認されていた。新正書法は,同年の 12 月までには公的文書はラテン文字に切り替えと,社会全体での切り替えも次年度末までということで,早いスピードで切り替えが行われた。その後,1926 年以来ウズベク共和国の首都であったタシュケントの口語を基礎として,1934 年に再び 6 母音に文語に改められ,さらに,母音調和の表記は廃止された。
A 1934 年まで使用
キリル文字 (1940 ― 1993)
1940 年には,ラテン文字から 33 文字によるキリル文字におきかえられた。その後,1956 年に正書法の改正が行われ,35 文字からなるアルファベットが制定され,ソ連時代を通じて使われることになった。
Барча одамлар эркин, қадр‐қиммат ва ҳуқуқларда тенг бўлиб туғиладилар. Улар ақл ва виждон соҳибидирлар ва бир‐бирларига биродарларча муомала қилишлари зарур. |
現行ラテン文字 (1993 ―)
ソ連邦崩壊後,1993 年に正書法は再び 31 文字 1 記号からなるラテン文字へと変更された。その後,1995 年に正書法の改正が行われ,26 文字・ 1 記号・ 3 複合文字に変更された。現在はキリル文字とラテン文字の両方が並立的に使用されているが,将来的にはラテン文字表記に移行する計画が立てられている。 [5]
Barcha odamlar erkin, qadr‐qimmat va huquqlarda teng boʻlib tugʻiladilar. Ular aql va vijdon sohibidirlar va bir‐birlariga birodarlarcha muomala qilishlari zarur. |
テキスト入力
入力方法
ウズベク語用キーボーを設定すると,タスクバーには ISO 言語コードISO 639-1の言語コードでウズベク語を表す「UZ」が表示される。【参考】 多言語環境の設定。関連リンク・参考文献
ウズベク語
- Omniglot: Uzbek
- Ethnologue: Languages of the World
- Online Uzbek radio: BBC OʻZBEK | ozodiki.org
- UJC ウズベキスタン・日本センター
- The Uzbek Alphabet Sjoberg, Andrée F. (1963) Uzbek structural grammar (Indiana University)
注
- ^ 庄垣内正弘(1988)「ウズベク語」『世界言語編(上)』(言語学大辞典,第1巻,三省堂)
- ^ 浅村卓生(2006)「アラビア文字からラテン文字へ―ウズベク語表記の変遷」町田和彦,菅原純編『周縁アラビア文字文化の世界:規範と拡張』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
- ^ ウズベク語表記の変遷 Eesti Keele Instituut
- ^ Nida, Eugene A. ed. (1972) The book of a thousand tongues (United Bible Societies)
- ^ 吉村大樹, ジュリボイ・エルタザロフ(2009)『ウズベク語文法・会話入門』(大阪大学出版会)