タークリー文字 Tākrī 英 Takri
タークリー文字は,インド西北部ヒマーチャル・プラデーシュ(Himāchal Pradesh)州の山岳地方で,現在,ヒンディー語(Hindī)のパハーリー(Pahāṛī)方言を記すのに用いられる。他のパハーリー方言は,デーヴァナーガリー文字で表記されることの方が多いが,西部パハーリー方言の中心シムラー(Śimlā)あたりでは,このタークリー文字が使われる。成立は古く,シャーラダー文字から成立した。シャーラダー文字の草書体ともいえる文字である。[1]
タークリー文字は,タックリー(Takkrī)文字,タッキー(Takkī)文字とも呼ばれる。タークリーという名称は,シアルコート(Sialkot)付近のタッカー(Ṭakkā)の間で用いられたことに由来する。さらに,タッカーの語源を遡ると,プラークリット語(Prākṛt)のタカシャ(Takaṣa)であり,タカシャとは,アーリア人の入ってくる以前に,パンジャープ(Pan̄jāb)に住んでいた住民の名前である。
文字構成
4 つの母音字と 30 の子音字からなる。母音の表記はきわめて不完全で,語中の短母音がよく省略されたり,語中の長母音がよく語頭で使われたりする。シャーラダー文字をくずしたのは,低階層の商人の必要に応じたからだという説がある。タークリー文字の重要性は,現行グルムキー文字に影響を与えたことである。(→ 溝上)
子音字 |
母音字 |
数字 |
文字資料
ユニコード
タークリー文字のユニコードでの収録位置は U+11680..U+116CF である。フォントは,Free takri Fonts を使用。
注
- ^ 溝上富夫 (2001)「タークリー文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 579.
関連リンク
- Takri alphabet
- AncientScripts.com Takri
- Omniglot Takri alphabet
[最終更新 2021/04/10]